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『星の名前』
その惑星は、まっ暗な宇宙にポツンと浮いていた。
住む者もいない、名前すらない惑星。
彼女のブラウンがかった瞳が、まるで吸い寄せさられてでもいるかのように、惑星を見つめている。
「あれが君の星だよ」
「私の星……」
何の因果か、一緒になって宇宙に飛び出してきた行きずりのふたり。
僕には僕の事情があり、彼女には彼女の理由があった。
そうして、辿り着いたのは宇宙の辺境。
「君が名前をつけるといいよ」
「名前……」
「そう。名前だ。これからこの星があり続ける限り、呼ばれ続ける名前だ」
彼女は胸の前で小さく拳を握りしめた。
そして口を開く──
「星の名前は──」