『赤と青の星』 その後 1
『惑星ルテボボに謎の遺跡 鑑定結果出る』
チョルココ星系政府は、星系内の惑星ルテボボ〈赤の大陸〉に存在する遺跡について、正式に鑑定結果を発表した。それによると〈赤の大陸〉着陸の原に存在するこの遺跡は、放射年代測定によると、建設から最低でも千年は経過しているとのこと。また、使用されている鉱物などから、惑星ルテボボで建設されたことはほぼ間違いなく、他から持ち込まれたものではないことが確認された。宇宙大航海時代をも大幅に遡る測定結果が出たことで、各方面から驚きの声が上がっている。調査を担当したベルカルチャ惑星開発会社のデニス・ローデンスキー副社長は、「驚くべき結果が出ましたが、これを作成したのが人類以外の知的生命体なのかどうかは判りません」とコメントした。
なお、この遺跡は、惑星発見直後からその存在が確認されていたもので、惑星発見の報告書『惑星ルテボボ第一次調査報告書』にもその記載が確認されている。そのため、発見当時すでにこの惑星に到達していた人類がいて、現在テール・ルゲナ氏が相続している第一発見者の権利が無効になるのではないかという議論が一部存在していたようだが、今回の調査によって遺跡の移設が否定されたことで、一応の決着を見たようである。
〈銀河惑星ニュース〉
『惑星ルテボボ独立宣言』
星歴458年 ルテボボ歴201年8月7日、チョルココ星系に属していた惑星ルテボボは、単一国家として独立することを宣言した。初代宰相はドラン・ルゲナ氏。ドラン宰相はチョルココ星系との経済圏は維持するとの声明を発表。独立を機に、今まで以上に農作物などの輸出に力をいれていきたいとした。この独立に際しては、ベルカルチャ王国が一番に支持を表明。それに続く形でチョルココ星系政府も支持を表明した。
〈銀河通信速報〉
『ベルカルチャ王国 惑星ルテボボとの共同事業発表』
ベルカルチャ王国のソラ・ベルカルチャ女王は、惑星ルテボボ〈赤の大陸〉への巨大投資を発表した。これはルテボボ王国との共同事業で、豊富な鉱物資源などを利用して、宇宙船開発などの重工業事業を展開していくとのこと。
かの地では、かつて非合法な鉱物採掘などが行われており、これにより収益を上げていたいくつかの企業は、チョルココ星系政府に追徴税を支払うことで合意した。なお、この追徴金についても、ベルカルチャ中央銀行が特別枠の融資を用意していると発表されている。
〈惑星世界経済ネット速報〉
『広域テロ警戒強化』
銀河広域公安委員会は、大規模なテロ警戒宣言を発令し、各国に注意を呼びかけた。これは、ここ数年多数目撃されている通称〝海賊船〟を、正式にテロ勢力によるものと認定したもの。この海賊船については、その一部が惑星ルテボボ〈赤の大陸〉で秘密裡に建造されていたことが判っており、公安委員会はルテボボ王国およびチョルココ星系政府から提出された武装宇宙船に関する情報を各国政府に公開することとした。
〈全銀河広域通信〉
『大物詐欺師〈放浪の銀狐〉脱獄』
チョルココ星系刑務所に収監されていた詐欺師〈流浪の銀狐〉ことシガニア・ダプタラス容疑者が脱獄したことが判った。ダプタラス容疑者は、惑星ルテボボ〈赤の大陸〉での違法な鉱物採取や、各国での詐欺行為で投獄されていた。なお、脱獄の詳細は不明。
〈スターニュースネット〉
『惑星ルテボボは宇宙人の農場だった?』
独立やベルカルチャ王国との共同事業で話題の惑星ルテボボだが、実は、ここは宇宙人の農場だったといったら信じるだろうか?
〈赤の大陸〉の謎の遺跡の件は記憶に新しいところだろう。人類が宇宙に進出するはるか以前のモノという鑑定結果がでた遺跡だ。しかし、惑星ルテボボにはさらなる謎がある。
農業国ルテボボの農場は〈青の大陸〉にあるわけだが、発見当時から、ここは異様に平らな大陸だったのだ。まるで、宇宙人が耕したあとのようだ、と表現した人物もいるくらいだ。さらにいえば、土着の植物がないにもかかわらず、惑星の酸素濃度が異様に高かったのだ。それは、かつて宇宙人が大量の農作物を作っていたとすれば説明が付く。
地権者のルゲナ一族が封印していた〈赤の大陸〉だが、時代の流れにのってその開発が始まった。筆者の説を補強する証拠が、これからどんどん出てくることを楽しみにしている。
〈銀河ムー特別号〉
『星河騎士団使用端末のOSについての報告』
過日、星河騎士団から押収した端末に使用されていたOSは、通称〝ビオタイト〟といわれるものでした。ビオタイトは2年ほど前からネット上で無料配布されているOSですが、最初期の開発者が誰なのか、もしくはどこの企業なのかが判っていません。ビオタイト(黒雲母)という言葉が示す通り、モジュールを重ねて機能を増やしていくこのOSは、現在携帯端末を中心に利用者を増やしています。
しかし、押収された端末に搭載されていたビオタイトのバージョンは、ネットで公開されているモノより高いものでした。加えて、オリジナルのモジュールも確認できました。
確証はありません。しかし、OSビオタイトが今回の事件の黒幕に繋がる可能性もありますので、ここに報告いたします。
〈ベルカルチャ王国 情報局技官 ディーア・スピリトーソ〉