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星の女王 ~ソラの物語~  作者: 夏乃市
赤と青の星
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『赤と青の星』 追跡 3

「自己紹介がまだでした。リンド・ルゲナです。以後お見知り置きを、ベルカルチャ女王陛下」

「ソラ……」ルードがおびえた瞳をソラに向ける。

「あんた、自分の弟を人質にするっていうの?」

「ええ。星河王がここを離れるお時間を稼ぐためです。ルードだってお役に立てるんだから嬉しいだろ?」

「う……うぅ……」

 拳銃でこめかみを小突かれて、ルードは真っ青になった。

「ベルカルチャ女王陛下におかれましては、まさかうちの弟を見殺しになさるようなことはあるまいと思いまして」

「……あなたがここで時間稼ぎをしているということは、銀狐はまだその奥にいるのね?」

「答える義務はありません。それから、あのお方は星河王だ。へんな名前で呼ぶんじゃねえ」

「……センスのないネーミングはあなたなのね」

「銃をすてろ」

 ソラとディーアは銃を放り出した。

「弟たちから奪ったやつもだ」

「……」

 ソラとディーアの前に拳銃が積みあがる。

「ふん。両手を肩の高さまで上げて、壁際までさがれ。……よしよし」

 リンドは満足そうににたにたと笑った。

「田舎惑星の女王だかなんだか知らないけれど、星河王の邪魔はさせないよ。これは、銀河で一番崇高な使命なんだよ」

「……この〈赤の大陸〉を使うことを銀狐に持ちかけたのはあなたね?」

「星河王だ! まあ、いい。その通りだ。これだけの土地と資源がありながら、遺跡だかなんだかのおかげで封印の地にしちまうなんて、もったいねえと思わねえか?」

「そうね」

「あのお方は俺の相談に乗ってくれた。そして、自分の崇高な目的には、この地こそ約束の地だとおっしゃったんだよ。俺のおかげで、この惑星ルテボボがどれだけ潤ったことか!」

 ふん、とソラは鼻で笑った。

「残念ながら、あなたは銀狐にいいように使われただけ。あいつには黒幕がいる。たまたまあなたに話をあわせていたに過ぎないわ」

「ばかばかしい」

「なら、本人に訊いてみれば?」

「何?」

 執務室とおぼしき部屋から、ちょうど星河王が出てきたところだった。

「王!」

「……リンド、その名は恥ずかしいと言ったでしょう」

「……」

「ま、おおむね女王様の言った通りです。ああ……でも、あなたが私の役に立ったのは本当です。人類統一の夢だって本当……まあ、私の夢じゃないですけどね。同じようなものです」

「な……」

 リンドの唇がわなわなと揺れている。

 星河王こと〈放浪の銀狐〉は拳銃で周囲を威嚇すると、せかせかとした足取りで部屋を出ようとした。

「な、なぜ、今さらそんなことをおっしゃるんですか!」とリンド。

「そりゃあ……」銀狐の声が遠ざかる。「私はあなたが嫌いでしたからね」

「く……」

 リンドがきつく唇をかみしめ、ルードに向けていた銃口が揺らいだ瞬間。ルードが思い切り頭を降って、リンドに頭突きをくらわした。

「こいつ!」

 腕から逃れたルードに対してリンドが銃を構えた刹那、ディーアの鋭い足払いがリンドに炸裂した。

 轟音とともに発射された弾丸はルードのこめかみをかすめ、背後の壁に突き刺さる。

 飛び込んだソラは、体制を崩したリンドの右手をつかみ、強烈な背負い投げを決めた。

「が……っ」とリンドの肺から空気がすべて吐き出される音がして、彼は動かなくなった。

「ルード!」

 ルードはこめかみから血をながして倒れていた。脳震盪を起こしているようだった。

 ソラは自分の服の一部を裂くと、ルードの額に巻いてやる。ついていてやりたいが、これ以上は医者を呼ばないことにはどうしようもない。

「ディーア、追うわよ」

 振り返ったソラの目にうなだれた銀色の髪が映った。誰かが星河王を小脇に抱えていた。

「スティー?」

「ははは、俺だったらかっこよかったんですけどね」

 スティーの声は、銀狐を捕まえている人物の後ろから聞こえてくる。

 ソラは顔を上げた。

「やあ、顔を見るのは本当に久しぶりだね、ソラ」

「デニス!」

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