『赤と青の星』 追跡 1
「どこへ行ったらいいですか?」
ディーアと運転を代わったスティーが訊いた。
「このまままっすぐ。あの丘を回り込んだ先に別の入り口があるわ」
「はい」
車がぐんと加速する。後部座席で頭をつきあわせたソラとディーアは、地下の工場からソラが持ち出してきた携帯端末をのぞき込んでいた。
「工場の地図でも入ってないかしら?」とソラ。
「んー、おそらく入ってると思います。ええと……使いにくいOSだな。……? なにこれ?」
「どうしたの?」
「あ、いえ。個人的に興味深いものが……後にします。地図ありました」
「見せて」
端末に入っていたのは簡単な階層図だった。部屋の間取りは書いてあるが、どこが何の部屋かは書かれていない。
「あの銀色野郎の部屋はどこですかね?」
「おそらく上階から数えて二層目の……ここね」
「なぜです? なにも書いてありませんけど……」
「部屋の前に小さな部屋が二つ。おそらく秘書室と応接室でしょ」
「なぁるほど。それに、あいつ高いところ好きそうですしね」
「ええ。この先にある入り口がここ。ぎりぎり間に合うかしらね」
「逃げるってことですか?」
「奴が〈放浪の銀狐〉なら逃げ足だけは早いわ」
「そんな奴が、大艦隊をひきいて銀河を統一しようなんて考えますかね?」
「なに言ってんですか? スティー先輩。現にやってるじゃないですか」
「そうだけどさ……」
「スティーの言うことは一理あるわね。黒幕がいると考えたほうが自然かもしれないわね」
「見えた! あれですね」
明け方、ソラとルードが忍び寄った小屋が目の前に迫っている。
「捕まえてみればはっきりしますよ!」とディーア。
「違いない」とスティーも続く。
「武装は少ないはずだけど、ふたりとも気をつけて!」
砂埃をあげて車が止まると、三人は飛び出すように駆け出した。