『赤と青の星』 星河騎士団 2
「牢に放り込んだ?」
「はあ……」
エレベーターの中で、ルードは困惑を隠しきれずにいた。
兄三人が尊敬し、そのお役にたちたいと言って飛び出していった星河騎士団。兄たちの薫陶を受け、自分もいずれは星河王のもとで世界のために働きたい思ってきた。ソラが現れたのは偶然で、ただ、結果としてそれが契機になった。ここで自分が力をつければ、いずれソラだって見直してくれると思っていた。それまでは、不自由をかけてもどこかに囲っておくつもりでいた。なのに──
なぜ、名前だけで星河王があれほど反応するのか?
ソラ・ベルカルチャ? その姓がなんだというのか?
ソラ──あなたは、いったい何者なのか?
「扉が破られている!」
三番目の兄が声をあげ、ルードは我に返った。目の前の倉庫の扉がこわされている。どうやらソラはここに閉じ込めてあったらしい。
「プラスチック爆弾だな」
星河王が扉を検分しながら言った。
「そんな。武器はとりあげました!」とルード。
「身体検査はしたのか?」
「一応しましたが」と三番目の兄。
「一応、ね。女性は膣内にものを隠すこともできるぞ」
「膣内……」
兄弟四人が絶句する。
「それから、この血をみろ。おそらく、皮下にプラスチック爆弾を少量埋め込んでいたのだろう。今の医療技術ならば傷跡を消すぐらいたやすい。膣内にナイフと雷管を持っていれば、それで十分この状況は説明できるな」
「そんな……」
ルードはその場にへたり込んだ。なんというか──格が違う。
「ソラは、ソラはいったい何者なんですか?」
「ソラ・ベルカルチャはいくつかの通り名を持っている」
ごくっ、とその場にいただれもがつばを飲み下した。
「その果断さと華麗さから〈金剛の薔薇〉とも、肉食獣のような眼差しから〈銀河の雌豹〉とも呼ばれるが……」
ルードは血の気が引いていく音を確かに聞いた。その噂は聞いたことがある。金剛の薔薇──銀河の雌豹──その通り名を持つ人物はたしか──
「彼女は、奇蹟の星と呼ばれる惑星ベルカルチャの女王。ひと呼んで〈星の女王〉だよ」