『赤と青の星』 星河騎士団 1
「君がルード君か。星河騎士団へ良く来たね」
「お目にかかれて光栄です。星河王」
銀色の髪をたたえた背の高い男に対して、ルードは深く腰を折った。
「よしてくれ。その名前は恥ずかしい。なにしろ名付け親は君の兄上だからね」
星河王が肩をすくめると、部屋の隅に控えていたルードの兄三人が幾分身を固くする。
「まあ、それでも、この地での作業は非常に順調にいっている。すべて君たち兄弟のお陰だ。名前が恥ずかしいくらいは我慢するさ」
ルードはなんと答えて良いのかわからず頭を下げ続けた。
「頭を上げたまえルード君。君は、星河騎士団のなんたるかを知っているかな」
「はい」ルードは大きな声で答え。「銀河に秩序と平和をもたらすものです」
「ふむ。まあ、言葉にすればそうなるね。で、実際には?」
「はい。絶対的な力を示すことによって、一滴の血も流さずに銀河に恒久平和をもたらす。現在ここで建造中の武装宇宙艦隊は、抑止力としての力であり……」
「分かっているならそれでいい。よく教育してあるな」
「は」兄三人が再び身を固くする。
「ルード君、そんなに堅苦しく考えなくて良いよ。地球時代から数百年たった今でも、人類は土地、それから国という概念から逃れられない。今はまだ大規模な星間戦争は起きていないが、人類の歴史をひもといてみれば、それがいずれ起きることは必定だね。そうは思わないか?」
「……はい」
「我々人類はね、早急に国という概念を捨て去る必要があるのだよ。人類というひとつの種族として、この宇宙で団結していかなければならない。その目標を最短で実現するための道具、それが今建造中の艦隊なのだよ」
ルードは神妙に頷いた。
「それに、人類が己の団結を固めるのに、この場所ほど相応しいところはあるまいよ」
「……」
ところで、と星河王は話を切ると、ルードにひたと対峙した。
「君がつれてきた女。確か名を……」
「ソラ、といいます」
「姓はなんと?」
「……は、いえ、存じません」
「どんな女だった?」
星河王はルードを連れてきた三番目の兄に訊いた。
「はい。歳の頃は二十五~六。髪は漆黒で肩胛骨の辺りまで。瞳はブラウンがかっており、大変整った顔をしておりました。体躯は鍛え上げられていて、かなりのばねがありそうでした」
「よく見ているな」
「……恐縮です」
「しかし、ソラという名前はどこかで聞いたことがある」
「え?」
「果たしてどこだったか……」
星河王の反応に驚いたルードは、あることを思いついて口を開いた。
「あの……恐れながら申しあげます。最近、チョルココ星系政府が〈赤の大陸〉の調査を民間開発会社に委託しました。どうやら、女はその関係者ではないかと」
「民間開発会社か。名は?」
「えっと……」
言いよどんだルードに対して、二番目の兄が口を挟む。
「ベルカルチャ惑星開発会社です」
「ベルカルチャ?」星河王の目が大きく見開かれる。
「はい。なんでも、かなりの実績のある……王?」
星河王は口元を隠して笑っていた。やがて絶えきれなくなったように大笑いをし始めた。
「ふふふふふふ、はははははははは。そうか、ベルカルチャ! ソラ・ベルカルチャか! 面白い! これも何かの縁、いや運命か」
星河王は大股で部屋を横切ると、部屋の扉に手をかけた。
「王、どちらへ」
「決まっている。謁見だよ」




