表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の女王 ~ソラの物語~  作者: 夏乃市
赤と青の星
24/94

『赤と青の星』 地下工場 2

 牢と言っても、使われていない倉庫を牢屋代わりに使っているだけのようだった。トイレも洗面台もないこんな場所では、長期間ひとを放り込んではおけない。

 後ろ手に縛られたまま床に転がされたソラは、男たちの足音が遠ざかっていくのをじっと待っていた。連行する際に胸や尻に無遠慮に触られ、油まみれになってしまったのがなんとも気持ち悪い。

 耳を澄まし、表にひとがいなくなったことを確信したソラは上体を起こした。現状を確認するために周囲を見渡す。部屋には小さな灯りがひとつ。今にも消えそうな灯りだが、暗闇よりは数段ましだ。そして、部屋の隅にはバケツがひとつと、使い古したモップが三本転がっているだけ。

「トイレ代わり? まさかね」

 ソラは自嘲気味につぶやくと、ドアへと目を移した。瞳には肉食獣のような輝きが宿る。

 典型的なシリンダー錠がひとつ。

「さて……ろくに身体検査をされなかったのは幸運だったわ」

 ソラはまず壁際まで移動した。背中を壁につけ、左手首に体重を乗せる。

「ぐっ……」

 鈍い音と一瞬の痛みののち、はずれた左手首からロープが抜け落ちる。にじんだ涙はそのままに、ソラは今度は右手で左手首を押さえると、力一杯それをはめた。

「痛ぅ──……」

 息が整うまで数秒。ソラはうずくまって痛みに耐えた。

 続いて砂にまみれたズボンを降ろしたソラは、膣内へと指を入れる。

「ん……っ」

 そこから取り出されたのは、小さな袋だった。手早く服装を整えると、ソラは袋を開けた。中には小さなナイフと、瞬発型電気雷管、電池、そして錠剤が二粒入っていた。

 続いて、ナイフを使って上着の袖を裂き、それをひも状にして左の二の腕に強く巻き付けた。残った布を口にくわえ、深呼吸をして右手にナイフを構える。

 つっ、とナイフが左上腕部を走る。皮数枚を裂いたその下には、薄い板状のものが埋め込まれていた。 ソラは指をつっこむと、強引にそれを引っ張り出す。痛みに涙がにじむが、叫び声を上げるのはかろうじて耐えた。血と脂にまみれたそれを床に放り出し、手早く傷跡を縛り上げる。現代の医療技術ならば傷跡を消すことなどたやすい。何しろ、これを埋め込んだ跡を完全に消してあったのだから。

 傷の状態と手首の状態を確認して、ソラは錠剤を眺めた。痛み止めだ。飲みたい誘惑に駆られるが、これを飲むと逆に感覚が鈍ってしまう恐れがある。ソラは錠剤をポケットにしまうと、腕から取り出した板を手に取り、血塗れた包装を破いた。

 プラスチック爆薬。可塑性をもつこの爆薬は、単体では安定していて爆発の危険は少ない。雷管と組み合わせることではじめて爆弾となる。

 再びドアの外にひとがいないことを確かめたソラは、扉のシリンダー錠に爆薬を仕掛けた。雷管を差し、そこからつながるコードに電池を繋ぐ──

 ぼんっ、という間の抜けた音がして、ドアの錠が飛んだ。大した威力ではないが、錠を開けるくらいなら十分だ。

 さっきまで後ろ手に縛られていたロープで髪をくくり上げると、まるで狩をする猛獣のような足取りで、ソラは扉の外へと踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ