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星の女王 ~ソラの物語~  作者: 夏乃市
赤と青の星
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『赤と青の星』 洞穴 1

 ソラとルードは一晩中歩いた。

 ソラは貨物機が狙撃された場所の地形を大体覚えていたが、空から見るのと地上を歩くのでは勝手が違う。墜落の衝撃でずいぶん距離が離れてしまったこともあり、ふたりは地形を確認しつつひたすらに東を目指した。そして、東の山が朝日に染まり始めた頃、岩と岩の間にできた洞穴を見つけ、そこで昼の暑さをしのぐことにした。

「本当に〈赤の大陸〉は〈青の大陸〉と違うよな。〈青の大陸〉にはこんな山々はほとんどないもんな」

 ひんやりとした洞穴の岩に寄りかかって、ルードがぼんやりとつぶやいた。

「おかしな話ね。どちらの大陸も同じように赤道付近に位置しているのに」

「大きな隕石の激突で山がすべて吹き飛ばされたんじゃないか、ってのが有力な説だけどね」

「その説には賛同しかねるわ」

「なぜ?」

「〈青の大陸〉の衛星写真を見ても、それらしい痕跡は見つけられない。それに、隕石の落下跡って、なかなか植物が根付きにくいのよ。でも、〈青の大陸〉は豊穣な土地だわ」

「それは地球型惑星改造の結果ってことじゃないのか?」

「そうね。そうかも知れないわね」

 ソラはそれ以上は議論に乗ってこなかった。ルードはなんとなく手持ちぶさたに周囲を見回し、地面から小さな石を拾い上げた。わずかに赤色の結晶を含んでいる。

「これ、宝石だったりしないのかな」

「……おそらくルビーだと思うけれど、宝石的な価値があるかどうかは不明ね」

「へえ……本当に? 宝石ってそんなに簡単に転がっているモノなの?」

「簡単ではないけれど、造岩鉱物なのだからあっても不思議ではないわ。宝石としての価値は、綺麗な結晶に相応のカットを施して初めて決まるのよ」

「ふーん。ルビーは工業用にも重要な鉱物だよね」

「工業用のルビーは人工的に結晶させたものが殆どだけれど」

「さすがに女性は宝石に詳しいね。俺なんか、ダイアモンドとルビーと、あとはサファイアぐらいしか知らないよ」

「ルビーとサファイアは殆ど同じモノなのよ」

「?」

「どちらも鋼玉という酸化アルミニウム鉱物なの。微量のチタンと鉄が含まれると青くなってサファイアに、クロムが含まれるとルビーになる。クロムのせいでルビーの結晶は育ちにくいから、希少価値ならルビーのほうが高いわね」

 ルードがまじまじと手元のルビーの原石を見つめる。

「一晩歩いてみて、ボーキサイトの岩をずいぶんと見かけたわ」

「ボーキサイト?」

「アルミニウムの水酸化鉱物。アルミニウムの原料になるわ。アルミは宇宙船の重要な資材よね」

「……やっぱり、ソラは調査団の一員じゃないの?」

「この程度の知識、地学に興味があれば誰だって知っているわ。今日日、惑星の地質はビジネス的にも重要なのよ」

「教えてくれ。ソラはいったい何の仕事をしているひとなの?」

「この状況でそれが重要なの?」

「ソラのことを知りたいんだよ」

「秘密」

「またそれ?」

「ええ、またそれ。女は秘密が多い方が魅力的でしょ?」

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