『赤と青の星』 赤い大地 1
灼熱の太陽がじりじりと大地を焼いている。辺りは見渡す限り砂と岩が広がっている。不毛の大地という言葉が、これほど的確な場所をソラは知らない。
「飲み物のボトルが何本か無事だった。よかったよ」
ソラが座り込んでいる岩影に、ボトルを抱えたルードが現れた。数百メート先には貨物機の残骸が横たわっている。
今から三時間ほど前、ソラたちの乗る貨物機は何者かに撃墜された。墜落する直前に、ソラは小型の地対空ミサイルのようなものをはっきり見ている。それは後部の貨物室に直撃し、貨物機はあえなく墜落した。ただ、ソラの叫び声にとっさに反応したルードが、緊急脱出装置を作動させたことがふたりの命を救った。
地上を見ようと高度も速度も下げていたことも幸いした。貨物機はバラバラにはなったものの、奇跡的に燃料への引火が起こらずにいた。落下の衝撃から目を覚ましたふたりは、それを見つけて狂喜した。なんとか中に入り、一部の荷物と、食料や飲料水を運び出すことに成功したのだった。
「しかし、これは想像以上に暑いね」
「そうね」
今、ふたりは夜が来るのを待っている。この日差しの中を動いたりしたら、あっという間に干からびてしまうだろう。
「ねえ、ソラ。やっぱり考え直さない? ここから移動するなんて無理だよ」
「間違いなく人のいる施設があったわ。私たちが狙撃されたのが何よりの証拠よ」
「なら、いけば殺されるかもしれない」
ソラは無意識に腰に手を回し、いつも拳銃がはさんであるベルト付近をなでた。落下の衝撃で拳銃はどこかへ行ってしまい、結局見つかっていない。
「待っていても助けはこないわ」
「それが現状に対する正しい認識なのはわかるけど」
「そうじゃないわ」
「え?」
「それは人生についての普遍的な認識よ。どんな時でも、待っていたって助けはこない。自分で動かなければだめなのよ」
「……」
ソラはごつごつとした岩に背を預けると目を閉じた。
「夜通し歩くことになるわ。眠れないかもしれないけれど、休んで起きなさい。あと、持って動ける荷物は限られるわよ」
「なんて図太い女だ……ソラ」
ルードが感嘆する目の前で、ソラは小さく寝息をたて始めた。