ー第5項 苦しみは神の餌となり、世界中の月曜日の憂鬱が少しだけ軽くなる、ある救世主と毛玉の夜明けの話
第5項 苦しみは神の餌となり、世界中の月曜日の憂鬱が少しだけ軽くなる、ある救世主と毛玉の夜明けの話
時計の針が、深夜零時を回った。
月曜日が始まる。
世界中のサラリーマンたちが、「また一週間が始まるのか」と溜息をつく時間帯だ。
巨大なモフ助が、ふと夜空を見上げた。
『……お、匂うぞ。世界中から立ち昇る、どんよりとした憂鬱の香りが』
月曜日の憂鬱。それは、現代社会が生み出した最大の負のエネルギー源だ。
「腹減ったのか?」
『デザートは別腹だ』
モフ助が大きく息を吸い込んだ。
ヒュウウウウウウ……。
目には見えないが、東京の空を覆っていた薄暗いモヤのようなものが、モフ助の口へと吸い込まれていく。
全部を取り除くことはできない。それは人間の営みそのものだからだ。
けれど、ほんの少し。
「会社行きたくないな」という気持ちが、「まあ、行ってやるか」くらいに変わる程度に。
翌朝。
街を行く人々は、いつもより少しだけ足取りが軽いことに気づいた。
空が青い。コーヒーが美味い。
理由はわからないけれど、なんとなく「今日はいい日になるかもしれない」という予感がする。
株式会社ホワイト・おつまみの社長室。
朝日が差し込む中、ケンジはソファで眠っていた。
その腹の上には、元のサイズに戻った白い毛玉が、幸せそうに丸まっている。
机の上には、飲みかけのグラスと、一枚の書き置き。
『本日の業務予定:二度寝。起きたら美味いラーメンを食う。以上』
最強の社畜から、最強の自由人へ。
佐藤ケンジの、終わりなき「おつまみライフ」は、まだ始まったばかりである。
――完。




