ー第4項 絶望の波動が食べ放題ビュッフェと化し、捕食者が逆に吸い尽くされて干からびる話
第4項 絶望の波動が食べ放題ビュッフェと化し、捕食者が逆に吸い尽くされて干からびる話
『……フザケルナ……! 我ハ……絶望ナリ……!』
ボスが激昂した。
プライドを傷つけられた怪物は、その身に蓄えた全エネルギーを放出した。
新宿一帯を覆い尽くすほどの、漆黒の波動。触れれば精神が消滅するほどの超高密度の「死の概念」だ。
世界中のモニターがブラックアウトしかけるほどの闇。
『死ネ! 無ニ帰セ!』
波動がケンジを飲み込む――その直前。
バシュッ!!
音が消えた。
ケンジの背後に、巨大な「口」が出現したのだ。
それはモフ助の実体化……ですらない。モフ助の「食欲」そのものが空間を歪め、ブラックホールのような吸引現象を引き起こしたのだ。
『いただきまぁぁぁぁす!!!』
空間が振動し、歓喜の声が響き渡る。
ボスが放った絶望の波動は、まるで掃除機に吸われる埃のように、螺旋を描いてケンジの背後へと吸い込まれていく。
『ナ、ナンダ……!? 我ノ力ガ……吸ワレテ……!?』
ボスが悲鳴を上げる。
攻撃が通じないだけではない。攻撃すればするほど、エネルギーを奪われていく。
『うめぇ! これうめぇ! 濃厚な孤独! 熟成された悲嘆! 最高級のフルコースだ!』
モフ助の吸引力は止まらない。
波動だけでなく、ボスの本体である霧までもが引き剥がされていく。
『ヤ、ヤメロ……! 我ハ……消エル……イヤダァァァ!』
ボスが初めて「恐怖」を感じた。
人類に絶望を与えてきた存在が、逆に「捕食される」という根源的な絶望に直面したのだ。
「あ、逃がさないよ」
ケンジが指を鳴らす。
モフ助の吸引力が倍増した。
ズゾゾゾゾッ!
麺をすするような音と共に、巨大だったボスの影が、一瞬にして収縮し、消滅した。
後には、乾いた風だけが残った。
紫色の空が割れ、雲の切れ間から太陽の光が差し込んでくる。
新宿を覆っていた瘴気も、すべてモフ助の胃袋の中だ。
「……ふう。ごちそうさまでした」
ケンジは軽く手を合わせた。
その背中には、満足げに膨らんだ(そして少し大きくなった)見えない毛玉が、プカプカと浮かんでいた。




