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ー第2項 強烈な怒りを喰らった神が容量オーバーで実体化し、オフィスに極彩色の幻覚が漏れ出す話

第2項 強烈な怒りを喰らった神が容量オーバーで実体化し、オフィスに極彩色の幻覚が漏れ出す話


 ケンジの中に生まれた「怒り」は、瞬く間に膨れ上がった。

 十年間の理不尽。安月給。パワハラ。そして、人間としての尊厳を踏みにじられた屈辱。

 それらが一気に噴出しようとした瞬間――。


 バクンッ!!

 モフ助が大きく口を開け(口はないが)、その怒りの奔流を丸ごと飲み込んだ。


『んぐっ……! うぉぉぉ、濃厚すぎる! これ、カロリー高ぇぇぇ!!』

 モフ助が震えだした。普段ならペロリと平らげる量だが、今回の怒りは質が違った。純度が高すぎたのだ。

 許容量を超えたエネルギーが、モフ助の体から溢れ出し始めた。


 ブワッ!

 突如、オフィス内に白い霧のようなものが立ち込めた。

「な、なんだ!? スモークか!?」

 黒川が狼狽する。


 その霧の中から、巨大な影が浮かび上がった。

 普段はケンジにしか見えないはずのモフ助が、あまりの高エネルギー反応により、半実体化してしまったのだ。

 ただし、可愛い毛玉ではない。直径三メートルほどの、白く輝く不定形の何か。後光のようなオーラを放ち、神々しくも禍々しい存在感を放っている。


「ひっ……! な、何だそれは!?」

 黒川が腰を抜かして後ずさる。


 さらに異変は続いた。

 モフ助から漏れ出した「解脱パワー(過剰摂取した精神エネルギーの排泄物)」が、物理空間に干渉し始めたのだ。

 殺風景な役員室の壁が、ぐにゃりと歪む。

 天井から極彩色の花々が降り注ぎ、どこからともなく妙なる調べが聞こえてくる。


『あー、食った食った。ゲップ出そう』

 モフ助の声が、今度は物理的な振動として空間に響いた。それは重低音のようであり、聖歌のようでもあった。


 ケンジは呆然と周囲を見渡した。

「あれ? ここ、天国?」

 床は蓮の華が咲き乱れる池に変わり、窓の外には金色の雲がたなびいている。

 これは幻覚だ。モフ助が見せている、集団催眠のようなもの。

 だが、そのリアリティは凄まじかった。


「部長、なんか楽しそうですね」

 ケンジは、極楽浄土の幻覚の中で、一人だけ青ざめている黒川に声をかけた。

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