表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/25

第3章 第1項 バズった収益を巡り、強欲な上司が契約書を盾に搾取を目論む話

第3章 ブラック企業、浄化される


第1項 バズった収益を巡り、強欲な上司が契約書を盾に搾取を目論む話


 ブラック・ホールディングス本社、最上階の役員室。

 革張りのソファに深々と腰掛けた黒川部長は、満面の笑みで目の前のモニターを見つめていた。画面には、昨夜のケンジの配信アーカイブが表示されている。再生回数は一晩で百万回を突破していた。


「素晴らしい……! これだ、これこそ我が社が求めていた『コンテンツ』だ!」

 黒川の手には、分厚い契約書が握りしめられている。

 そこには、社員が行ったあらゆる活動の収益は、全額会社に帰属するという、現代の奴隷契約とも言うべき条項がびっしりと書かれていた。


「佐藤君、入りたまえ」

 ノックの音と共に、ケンジが入室してきた。相変わらずヨレヨレのスーツ姿だが、その表情はどこか晴れやかだ。

 肩には、黒川には見えないモフ助が乗っている。


「失礼します。……あの、退職願を持ってきたんですけど」

 ケンジが懐から封筒を取り出そうとした瞬間、黒川がバン! と机を叩いた。


「バカ言ってるんじゃない! 君は今、我が社の希望の星なんだぞ!」

 黒川は立ち上がり、ケンジに歩み寄る。その目は、金の亡者が獲物を見つけた時の輝きを放っていた。

「見ろ、この数字を! 投げ銭だけで数百万だ! これがあれば、君の給料を上げてやることもやぶさかではないぞ。……まあ、諸経費を引いて、手取り十七万くらいにはしてやろう」


 ケンジはきょとんとした顔で黒川を見た。

「え、十七万ですか? 今の十五万から二万もアップ? すごいですね」

 嫌味ではなく、本心からの感想だった。長年の社畜生活で金銭感覚が麻痺しているのだ。


 しかし、黒川の次の言葉が、その空気を凍りつかせた。

「ただし! 今後も君の配信活動は全て会社の管理下に置く。アカウントのパスワードを教えなさい。それと、君のプライベートな時間も全て捧げてもらう。君という存在自体が、我が社の『備品』なのだからな!」


 備品。

 その言葉が、ケンジの胸の奥底にある何かを刺激した。

 人間扱いされていないことは知っていた。だが、面と向かって「物」だと言われると、さすがに湧き上がるものがある。


「……備品、ですか」

 ケンジの声が低くなる。

 ドクン、と心臓が跳ねた。それは「怒り」だった。静かだが、確実に燃え上がる義憤。


『お? なんだなんだ、今日の怒りは一味違うぞ? 熟成されたヴィンテージワインみてぇなコクがある!』

 肩の上のモフ助が、目を輝かせて(目はないが)身を乗り出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ