2日目
「あらあらあらあら」
クリスがここに来る前まで、辺境を牛耳っていたお偉いところのお嬢様、名をアルジェ・メロ・メロイディン。
実は次の婚約者候補として名を挙げている令嬢のひとりなのですが……。
「素晴らしい心がけですわ!!男性の魅力を引き立てるのはまさにセェクシー!!」
「ご理解頂けるとは思いませんでした……アルジェ様」
先日の写真家も然り、この辺境領地自体、呪いでもかけられているのではというレベルで住んでいる民の挙動が、この通りおかしい。
今日は一応婚約者候補としての顔合わせとしてクリスに屋敷に招待されたにも関わらず、なぜか私と話をしたいと応接室で顔を突き合わせています。
アルジェ様に紅茶を淹れ、失礼ながら正面の椅子に座らせていただきます。
「遠慮なさらないで!ドンッとお悩みを!わたくしに!!」
「あ……それでは――」
一発目にぶち込みすぎ、ネタ切れだと正直に伝えてしまった。
「……知識ですわね」
「あ、はい、確かに……私にはそういった知識はほとんど持ち合わせておりません」
「少々お待ちになって?セバーーース!」
パンパンッと室内に響く手を叩く音。そんなに大きな声も、叩く音もいらないほどの距離にセバスはいましたが。
「わたくしの部屋から例のものを持って参りなさい」
「御意」
一瞬で消え去るセバス。その運動神経に、私は少しばかり、嫉妬をしてしまいました。
おかわりの紅茶を淹れたところでセバスが帰還しました……大量の書物を抱えて。
「ご苦労さまセバス、休んでてよろしくてよ」
「御意」
正直目の前の書物より、セバスに興味がある私。
しかし、協力してくれると申し出てくれたアルジェ様を蔑ろにはできない。
「コチラとコチラがおすすめかしら……あと……あなた、濡れ場は平気かしら?」
濡れ場?
「なんとおっしゃいました?」
「滲み出る魅力が、ぶつかり合い愛し合う……あ〜〜〜ん!なんて美しのかしらぁ〜〜!!」
天を仰ぎ、私の声が届いていない様子。仕方なく、進められた本の一部を見る……これは……男同士の恋愛を描いた大衆小説っ!
まさかこの令嬢……!
「腐ってやがる……!」
「あら?お土産のチーズケーキのこと?青カビのチーズを使っているから確かにニオイは強いものですけれど腐ってはいませんわ?」
違う!!!!!




