初日
パッシャァッン――……
屋敷の庭にて。
パッシャァッン――……
響く水音。
パッシャァッン――……
クリスの体に優しく叩きつける。
「くっ……ふぇっ……ふぇっ……」
「いけませんクリス!!耐えてください!!」
冷たい水を身体に受け、寒さに耐えているクリス。
震える身体、思わずくしゃみをしそうになっているのを掛け声でとめる。
「日が昇るまで後少しです、耐えてこそ、セクシー!」
「た、耐えてこそ……セクシー……!!」
この程度で鼻水、唾液をぶちまけるような男になってはならない。
「まだ初日ですよクリス、いずれくしゃみすらセクシーになるかもしれませんが焦ってはいけません、一歩ずつ……一歩ずつ刻むのです!」
「サニーの言う通り……今はまだ耐える時……!」
朝方の冴える空気に晒され、筋肉が収縮しているおかげで引き締まって見える。
いずれ肉体の改造も課題になるかもしれない、代謝を上げ、水を被った体から湯気が出るのもまた一興……スケジュールに組み込むのを視野ですね。
「サニー!!夜明けだ!!」
「いきますよ皆さん!!……たぁっ!!」
「ふんっ!んんんぅ!!!」
今まで身体にだけかけていたのは、この時のため。
急に水をかけると流石にこの寒さの中では、命の危険が伴う。こんな事の為に死んだら一族の恥どころか、クリスは家系図から存在を消され、隠蔽され、私達使用人共々存在を無かったものと闇に葬られるのは確実……それは嫌。
「はぁっ……!」
桶いっぱいの水を屋敷の使用人数名と共に、順番にリズムよく、クリスの頭にかかるように水を掛けていく。
「まぁ……」
「おぉ……クリストファー殿下……」
「美しい……」
朝日に照らされていくクリスの姿は煌めいていた。
私以外の使用人達からうっとりとした声が漏れていた。
「『水も滴るいい男』……ファーストセクシーには相応しいかと……」
「これが……ファースト……セクシー……」
「写真家!!抜かりなく撮影なさい!!」
「はっ、はい!!」
こんな早朝に呼び出された町の写真家も溜まったものじゃないだろう。しかし、本人は今の自分が見えていないのだから確認手段がないと納得はしない……申し訳ない。
「あ!あ!最高っす!さいこうっす!」
「ふふ……そうか?」
濡れた髪をかきあげるクリス。
なぜか興奮しだす写真家。
「ふぁ、ファーストセクシー最高!!」
「ファーストセクシー!ファーストセクシー!」
クリスを囲み、腕を振り上げ、声を上げ、喜び称え始める部下たちと写真家。
さすがにドン引きせざるを得ない。
「ふえっくしょぉぉい!!」
気が緩んだせいか、くしゃみが出てしまったクリス……まぁ、よく耐えれたとは思います。
その声に我に返った部下たち、タオルでクリスの体の水を拭き取り、毛布で体を巻いていく。使用人としては、合格。
「一歩踏み出しましたね、クリス」
「あぁ……ありがとうサニー、ナイスファーストセクシー」
本当はこんな早朝にやらなくてもいい『水も滴るいい男』作戦……私を巻き込んだ代償と洗礼として受け取ってください、友人より、愛を込めて。
ここは変狂の地




