使い魔の瓶詰
井戸の水が綺麗になって、システィナの生活は向上した。いつでも水が飲めるし、瓶詰め作りに使うこともできる。暖炉の火のつけ方はわからないけれど、火をつける瓶詰めを作ればきっと解決するだろう。
「そのためには、火の瓶詰を作る素材が必要ですね!」
持ち込まれた荷物の中にも簡単な素材はあるけれど、火をつける瓶詰を作るための素材は入っていない。おそらく、ちょっとでも危険がある瓶詰を作れる素材は持たせてもらえなかったのだろう。
「でも、家の前は広い広い森。ここなら瓶詰めの材料もたくさんあるはず……!」
システィナはふんすと気合を入れて、瓶詰めの素材を手に入れるため、家の前の森へ繰り出した。
しかし、森へ入って一分で事件は起こった。
足元からガササササササという音がして、三〇センチぐらいの何かがシスティナに体当たりしてきたのだ。見ると、でっぷり太った灰色のネズミのような魔物――ネズズだった。
『キュキュキュ!』
「魔物!! いるのはわかってたけど、こんなすぐ近くにいたなんて。やっぱり、わたし一人で森に入るのは早かったんだ……いた、いたいっ!」
小さいながらに力強いネズズの体当たりにダメージを受け、システィナはよろける。しかしその先に落ちていた木の棒を見つけたので、振り回してどうにかネズズを撃退する。
システィナの力で倒すのは難しいけれど、追い払うくらいなら辛うじてできるのだ。
ただ、今のはネズズが一匹しかいなかっただけで、数匹の数になっていたらこちらが襲われて大変なことになっていただろう。
システィナは一度家に戻り、使い魔の瓶詰めを早急に作るべきだと考えた。
使い魔の瓶詰めを作ること自体はそんなに難しくはない。
瓶詰めにもいくつか種類があり、作った瓶詰めによって使い魔にできる魔物が変わってくる。
というよりは、狙った魔物が好みの瓶詰めの空間や食べ物などを中に用意しておく必要がある。
そのため、強い魔物を使い魔にしたい場合は質の高い瓶詰めを作らなければならない。この森にいる程度の魔物であれば、そんなに凝った瓶詰めを作る必要はないので、今システィナが持っている素材でも問題なく使い魔の瓶詰めを作ることができるだろう。
地下の作業場に行き、システィナは慣れた手付きで瓶詰めを作る。
「初めて作る使い魔の瓶詰……。どうしよう、ワクワクしちゃう。だって、魔物が自分の家だと思ってくれるんだよね? わたしも、この家はすごく素敵だと思うし……魔物にとっても、安心できる好きな家になってくれたらいいなぁ」
空の瓶に入れるのは、魔石に水、それから魔物が食べるご飯。システィナは悩みつつも、食べやすいよう小さく切ったジャガイモを入れてみた。
そして出来上がったのが、捕獲瓶詰。
「よし、これを仕掛けてわたしだけの使い魔を手に入れる! そしたら使い魔に強くなってもらって、森を探索して素材をたくさんゲットして、さらに瓶詰めを作る。……うん、楽しそう!」
ということで、家から十メートルほどの森の中に瓶詰めを設置してみた。
しばらく瓶詰めを置いて、その中に魔物が入っていれば使い魔の瓶詰が完成だ。
***
翌日、システィナは森の中に仕掛けた瓶詰めを見に行くことにした。
仕掛けた瓶詰めは二つ。高望みかもしれないけれど、両方の瓶詰に魔物が入ってくれていたらいいなとシスティナは思う。
「でも、難しいかな? 本には、捕獲瓶詰を設置してもすぐに魔物が入ってくれることはほとんどないってあったし、初めて作った捕獲瓶詰だもの……。魔物が、この瓶詰めいいなって思って住み着いてくれるとは……でも、わたしなりに一生懸命マナを注いで瓶詰を作ったし、ジャガイモも入れてみたし。でもでも、もしかしたらパンとか、私も数えるほどしか食べたことないけど、お肉とか入れておいた方がよかったのかも?」
一人ぼっちに寂しさを覚えてしまったシスティナの悩みは尽きない。
少し離れた場所に二つ置いてあるので、まずは一つ目の瓶詰めを見てみた。すると、何かが瓶詰めの中でうごめいている。
「え、魔物が入ってくれてる! 成功したんだ……! すごい!!」
システィナが瓶詰めを手に取って見てみると、中には薄い黄緑のうねうねした物体が入っていた。
「本で読んだことがある。この子はスライム。確か最弱の魔物で……強くはないけど、捕獲瓶詰によく入るって書いてあったはず」
どうやら捕獲しやすい魔物だったため、システィナの瓶詰めにも入ってくれたようだ。
瓶詰めに入った魔物は、普段の大きさから瓶詰めのサイズに合わせて小さいサイズになる。
そして、瓶詰の中で生活し、必要なときに瓶から出てくるという仕組みになっている。
システィナは早速瓶詰めの蓋を開けてスライムを出す。
すると、スライムは『キュイ』と鳴いてシスティナに懐いてくれる。どうやらシスティナのことを主人だと認識してくれているようだ。
「わあ、すごい! よろしくね、スライムさん」
『キュイ~』
最弱の魔物スライムではあるが、システィナは一匹目の使い間を無事にゲットすることができた。




