#009 セレーナとカイルは魔力測定を受ける
「魔力測定ってなんですか?」
そう私はノインさんに聞いた。
「こういう冒険者になりに来る人の中には魔法が使える人がたまにいるんだけど⋯⋯。 でも自分の力をよく知らない場合が多いのよ」
「なんでです?」
そうノインさんの説明に質問するカイルだった。
「貴族の人とは違ってちゃんとした学校や指導者もいない場合が多いからよ。 だから我流で魔法を学んでると自分でも知らない魔法適性とかがあったりするのよね」
「なるほどー」
そう説明を聞いたカイルは感心する。
しかし私にとっては困ったことだ。
この魔力測定を受けるとおそらく私の回復魔法適性がバレるからだ。
「それ絶対に受けないといけないんですか?」
いちおう聞いてみる私だった。
「過去にね「私は魔法が使えるから」と嘘ついて冒険者になって、それで仲間になったパーティーに迷惑かけたりする例があってね⋯⋯。 それで魔法使いには魔力測定が義務付けられている決まりになったのよ」
「なるほど⋯⋯」
聞けばなっとくの理由だった。
しかし困ったな⋯⋯。
「その魔力測定の結果を非公開にはできませんか?」
そう私は小声でノインさんに訊ねる。
「⋯⋯なにか事情があるのね」
そうノインさんも察したらしい。
「もちろん魔力測定の結果は非公開にできるわよ。 まあ人前でする人もいるけどね」
「それは実力アピールで仲間を作るため⋯⋯ですね?」
「そうよカイル君」
これは私にとって都合の良い制度だった。
「じゃあ私は非公開でお願いしますね」
「ではこっちから中に入ってきてセレーナさん」
そうノインさんが案内するギルドの奥の室内に案内される私だった。
「えっと⋯⋯俺は?」
「カイルも来る? ノインさん、カイルとはパーティーを組むので秘密にはしなくていいので」
「そう? じゃあカイル君もいらっしゃい」
そしてカイルも室内に入ることになった。
「あのノインさん⋯⋯俺も受けてもいいかな魔力測定?」
「あら? カイル君も魔法を使えるの?」
「いや全然。 でも俺にも隠された力が眠っているかもしれないし」
たしかにカイルみたいな環境で生きてれば魔法に覚醒しないまま、というのはありえる事だ。
「そうね。 カイル君みたいにダメ元で魔法測定を受ける冒険者は多いのよ⋯⋯というかほとんど全員ね」
「そうなんだ」
「でもそれで本当に魔法の力があるのがわかる人はほんの一部だから⋯⋯あまりガッカリしないでね」
「あ⋯⋯ハイ」
⋯⋯そのノインさんの言い方でカイルの魔法適性があるという確率がよほど低いのだと私は察したのだ。
まあ私の目から見てもカイルに魔力があるとは思えないけど。
しかし帝国の人には成人時に祝福を授かり、それまでにない力に目覚める例もあるからなあ。
そしてノインさんが入ってきた扉を厳重に閉めて⋯⋯。
「さあ始めましょう」
そう言ってその部屋にある水晶を指さす。
あ⋯⋯コレ知ってるやつだ。
私はなんども大聖堂での修業の成果を確認する時に使った魔力測定用のオーブである。
中央に石板がありその周りに色とりどりのオーブが配置されている。
この各色のオーブの発光具合でその魔法の適正値を探るというものだ。
ちなみに⋯⋯。
火属性、赤色。
水属性、青色。
風属性、緑色。
土属性、茶色。
聖属性、金色。
闇属性、紫色。
光属性、白色。
陰属性、黒色。
この8属性となっている。
「それじゃセレーナさんから」
「はい」
まあ私は使ったことがあるので結果はわかりきっているのだが⋯⋯。
そして私の予想通りに『金と緑と青』が反応した。
「こ! これは!? 聖属性!」
いちおう風属性と水属性もあるんだけど⋯⋯まあ弱いな聖属性に比べれば私のは。
「というわけなので秘密でお願いします、ノインさん」
「⋯⋯ということはセレーナさんはこの結果を知っていたのよね? あなたはいったい?」
「私は帝国の大聖堂を破門になった元聖女です。 なのであんまり目立ちたくないけど冒険者にはなりたかったので」
「なるほど⋯⋯そういうわけですか。 わかりました! この件はギルドマスターだけに報告しますね。 あと⋯⋯緊急時には治療系の指名依頼がセレーナさんには行くと思いますが、いいですね?」
「それは構いません。 私の力で助けられる人がいるのならこの力を惜しむ気持ちはありませんから」
そうキッパリと私は言う。
そのためにこの力はきっと神様から授かったのだから⋯⋯。
「なるほど⋯⋯セレーナさんが破門になった理由がなんとなくわかりましたね」
そう笑うノインさんだった。
こうして私の魔力検査は終わったのだが⋯⋯。
「じゃあ今度は俺の番だな!」
そう興奮気味にカイルが石板に手を乗せる。
「カイル君⋯⋯結果にあまりガッカリしないでね?」
そうノインさんが言う⋯⋯まあそういう人が多いのだろうと思わされるやり取りだった。
⋯⋯シーン。
どのオーブも反応しない。
「あのカイル⋯⋯そのガッカリ──」
そう私が慰めようとしたその時だった。
ぼんやりと⋯⋯微かに光るオーブが1つだけあったのだ!
それも純白の輝きの!?
「こ⋯⋯これは!? 『光属性』のオーブ!?」
そうノインさんが驚く。
「カイルが光属性⋯⋯。 私はじめて見た」
一応大聖堂にもこの魔力測定板はあって多くの聖女候補生が使ってはいたのだが⋯⋯この光属性だけは居なかったのである。
それもそのはず⋯⋯この光属性とは。
「こ⋯⋯これはギルマスに報告しないといけません! カイル君、一緒に来てください! いいですね!」
「あ⋯⋯はい」
そう押し切られるカイルだった。
というかノインさんの態度が私の時よりも必死だった。
まあ仕方がない、それもそのはず⋯⋯。
「カイルが⋯⋯勇者?」
神様に選ばれし勇者の資質⋯⋯それを持つのがカイルだという事なのだから。
そして私達はノインさんに連れられてギルドマスターの部屋へと案内される。
その途中でカイルは不安そうに。
「なあセレーナ、俺⋯⋯大丈夫だよな?」
「カイル⋯⋯」
大丈夫とは言えない私だった。
勇者が居るということはこの世には対となる魔王もいるはずなのだから。
だけどカイルだけが勇者というわけではないはずだ。
古文書によると『魔王現われし時、勇者の資質ある者達もまた現れるだろう』とある。
勇者ではなく『勇者の資質ある者達』なのだ。
だからカイルのように今まで無自覚だった勇者候補はこの世界に多数存在しているはずなのだ。
しかしこうしてカイルのように見つかる例が少ないだけで⋯⋯。
「カイル安心して」
「セレーナ?」
「カイルは私がぜったいに守るから」
元聖女である私がカイルと巡り合ったのは偶然ではない。
これは運命なのだ!
そう、カイルこそがこの世界を救う勇者になる人なのだ!
それを守る使命が私の役目!
⋯⋯うおおおっ! 燃えるシチュエーションだあ!
まさかこんな戯曲みたいな事になるなんて⋯⋯最高だ!
⋯⋯⋯⋯いや反省しないと。
たしかに楽しい事態になったけど、けして私はこの世界の破滅を望んではいないのだから。
まああの帝国が滅びるくらいならべつにいいけど。
でもそれでも住んでる国民に罪は無いし、やっぱり私とカイルで守らないと、この世界を!
「こんなことになるなんて⋯⋯」
私も同じ気持ちだ。
でもカイルは不安そうに。
だが私はワクワクを抑えきれずに⋯⋯。
こうして私達はギルドマスターと面会するのだった。
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