#003 セレーナとカイルの冒険への旅立ち
街に着きました!
すると⋯⋯!
「父さん! 無事だったのか!」
「ああ! 心配かけたなカイル」
そう1人の少年がおじさんを出迎えたのでした。
見たところこのおじさんの息子さんみたいですね。
「なんだ父さん? その子は?」
物珍しそうに私を見る男の子ですね。
⋯⋯⋯⋯そうか、銀髪が珍しいからか!
自分で言うのもなんですが⋯⋯銀髪の魔力特性の人はけっこう少ないからあんまり居ないのですよね。
こんな辺境の街だと銀髪なんてほとんど居ないのかもしれません。
「この子はカッポの恩人さ」
「カッポ? ああその馬の名前ですか?」
わざわざ労働力の馬に名前を付けるなんて大切にされているんですね。
⋯⋯助けてよかったな。
「そうなのか! ありがと! 俺はカイル! 君は?」
「⋯⋯セレーナです」
「セレーナ! 可愛い名前だな!」
「⋯⋯そうですか?」
名前なんてどうでもいいのですが⋯⋯まあ悪い気はしませんね。
「おいカイル! この子を服屋に案内してやれ!」
「服屋に? ああいいぜ!」
どうやらこのカイルに私を案内させるつもりのようですね。
「お前の服も一緒に買え、料金は家にツケていいから」
「ああサンキュー父さん!」
「あの、私の服は自分で買いますが?」
少ないですがお金なら持ってます、私。
⋯⋯いつ何があるかわからないので靴底とかに金貨を数枚仕込んでいるので。
「教会の治療費に比べれば嬢ちゃんの服代くらい安いもんさ」
まあそこまで言われたら⋯⋯。
「じゃあ、お言葉に甘えますね」
まあお金を節約するのにこしたことは無いですから。
「じゃあ行こうぜ、セレーナ」
「はい」
こうして私とカイルは服屋へと移動するのでした。
そして服屋で安物の服を購入した私です。
⋯⋯正直ここで聖女服を下取りに出せるならしたいのですが絶対に足がつくし、この店にも多大な迷惑がかかるので我慢です。
「あとカバンを1つ下さい」
「あいよ」
そう大きめのバッグも購入しました。
これに今まで着ていた聖女服は締まっておきましょう。
いずれ処分するまで⋯⋯。
「オヤジさん! 俺の皮鎧できてる?」
「ああ完成しているぜ」
「皮鎧?」
どうやらカイルの買い物は服ではなくて皮鎧だったみたいです。
「服を買いに来たんじゃないんですねカイルは?」
「ああ。 俺は冒険者になるんだ、そのための準備さ!」
そう言いながらカイルは店の人から受け取った皮鎧を試着しています。
⋯⋯けっこう似合ってます、わりと頼もしくなりましたね。
「冒険者ですか⋯⋯私もです」
「え? セレーナも?」
そう驚くカイルでした。
「セレーナはどこに行くつもりなの?」
「私ですか? 私は共和国の冒険者ギルドでも行こうかと⋯⋯」
すると。
「セレーナもか! いや俺もセグレイト共和国へ行こうと思ってたんだ!」
「へー、カイルもですか⋯⋯でもなんで?」
国外逃亡の私と違ってカイルは他国へ行く理由なんか無いと思うのですが?
「この国は駄目さ、平民にチャンスは無い。 でもセグレイト共和国なら難しいけどチャンスだけはある! あとは実力勝負さ!」
なるほど⋯⋯これはこの帝国の階級社会の問題ですね。
平民には冒険者になる自由も無いというのがこの国なのですね⋯⋯知らなかった。
「では私と一緒に行きますか? セグレイト共和国まで?」
「ホントに! ああ行く! 一緒に行こうぜセレーナ!」
「⋯⋯はい」
まあいいでしょう。
私も1人だと不安でしたから。
私は守護の魔法なら自信がありますが攻撃魔法はそれほどでもないので少し不安はあったんですよね。
それに途中で野営とかもあるわけだし⋯⋯1人じゃないのは心強いです。
「俺は明日旅立つ! だから今日は俺の家に泊ってけよセレーナ!」
「では、お言葉に甘えますね」
こうして私はカイルと一緒に彼の家に行くのでした。
「ただいまー、父さん! 母さん!」
「⋯⋯お邪魔します」
そのカイルの家はこじんまりしていますがわりと綺麗な家でした。
「おお! 帰ったかカイル!」
「カイル⋯⋯おかえり」
⋯⋯?
カイルのお父さんはさっき会ったおじさんですが⋯⋯カイルのお母さんはどうやら足が不自由な方のようですね。
なんか歩き方がおかしい⋯⋯骨折の後遺症かな?
「カイルのお母様⋯⋯足が不自由なのですか?」
「ん⋯⋯? ああ、昔ちょっとね」
「⋯⋯」
あまり気にしてなさそうなお母さんと、なんか少しだけ不機嫌になったカイルでした。
まあどうでもいいか。
それよりも⋯⋯なんか見ててうっとおしいし。
「よければ治しましょうか、その足?」
「治せるのかセレーナ!」
「ええまあ」
治せる怪我をほっとくというのはなんだか精神的に良くないですね。
⋯⋯まあ聖女時代の時はこういうのは止めるように言われていたんだけど、もうどうでもいいし。
「今夜泊めてください。 その代わりに治してさし上げるという事で⋯⋯どうです?」
そう聞いてこの家族は⋯⋯。
「いいのかい?」
「治してくれ、母さんの足を!」
「大丈夫! この子の魔法はさっき馬の骨折も簡単に治したんだぜ!」
「⋯⋯まあそういう事です。 じゃあ治しますね」
「じゃあ⋯⋯おねがい」
私はお母さんに近づいてその足を診る。
⋯⋯魔力をうっすらと通して診ると確かに骨が歪んでくっついていた。
私はその骨に魔力を通してまっ直ぐに矯正する。
「⋯⋯どうかな? 歩いてみてください」
「ほんとにもう治ったのかい?」
そう信じられない表情のお母さんがカイルとお父さんの手を借りてゆっくりと歩きます。
「どうです? 治ったと思うけど⋯⋯違和感があるなら微調整しますよ?」
「い⋯⋯いや! 完全に元に戻ったよ!」
そう自信をもって力強く歩くお母さんでした。
「ありがとうよ⋯⋯お嬢ちゃん」
「どういたしまして」
⋯⋯じつにいい気分です!
今までの治療行為なんて高額請求しているのに私には1ゴルも入らないどころか罵倒される始末ですからねー!
やっぱり大聖堂は屑ですね、出てきて正解でした。
「なあ父さん母さん! このセレーナを今夜泊めてやってくれ。 それで俺は明日セレーナと一緒にセグレイト共和国まで行くんだ」
「本当なのかカイル?」
「なら今夜は御馳走を作らないとね!」
こうしてこの日はこのカイルの家族にもてなされてしまいました。
⋯⋯温かい家庭でした。
私にはこういう家族の思い出がまったく無いので少し嬉しい体験です。
そしてその日の夜⋯⋯。
家の前で剣を振っているカイルが居た。
なかなか堂に入った剣さばきに私には見えますね。
こう見えて私はお城の騎士団の訓練の治療役として待機していたこともあるので、剣術を見る機会もそれなりにありましたので。
「セレーナはさあ⋯⋯」
「なんですか?」
「聖女⋯⋯なのか?」
「辞めました聖女は」
「辞めた?」
「だって聖女は自由に治療できないので!」
そう聞いて驚くカイルはしだいに笑い始めた。
「はははっ! もっと早くセレーナみたいな聖女と出会っていればなあ」
「お母さんの治療をちゃんとしてもらえたから?」
「うん。 それに⋯⋯この国を嫌いにもならなかっただろうし⋯⋯さ!」
そう力強く剣を薙ぎ払うカイルだった。
「私⋯⋯この国だいっきらい!」
「なんだセレーナもか!」
そう笑いあう私とカイルだった。
翌朝⋯⋯。
まだ朝早くに私とカイルは旅立つ、セグレイト共和国へ。
「カイル⋯⋯がんばれよ!」
「辛くなったらいつでも戻ってきなカイル」
「ありがと父さん母さん。 でも俺は凄い冒険者になって大金を稼いで、早く父さんと母さんを楽させてやるからさ!」
なるほど⋯⋯それがカイルの目標ですか。
じゃあ私の目標は⋯⋯なんだろうな?
「セレーナちゃん、カイルの事たのむよ!」
「は⋯⋯はい、お母さん」
そう思ったよりも力強く私の手を握り締めるお母さんでした。
⋯⋯あったかい手だな。
「カイル! セレーナをしっかり守れよ!」
「もちろんさ父さん!」
こっちはバシバシ肩を叩いてますねえ⋯⋯痛そう。
「じゃあ行ってくる!」
「それでは⋯⋯行ってきます」
私は見送られてしまった。
このたった一夜を過ごしただけの家族に。
⋯⋯でもまあ悪い気はしません。
ここからが私の本当の旅立ちなのだから、これでいいのです!
そして目指すのはお隣にある自由と冒険の国⋯⋯セグレイト共和国だ。
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