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月光の聖女幻想記~追放聖女セレーナと未来の勇者たち~  作者: 鮎咲亜沙


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#029 セレーナと女神たちの復活

 私たち『アルテミス』のメンバーがついにセレマーサ様を祭る大神殿にやって来た。

 ⋯⋯やって来たのだが!?


「そんな! 大神殿が!」

「壊れている⋯⋯どうして?」


 そう見た通りの大崩壊していたのだった。


「とりあえず奥に行きましょう」


 そう私を先頭にパーティーは大神殿の跡地を進むのだった。


「これも壊れている⋯⋯」

「セレーナこの像はなんなんだ?」


 そのカイルの質問に私は答える。


「この女神像はセレマーサ様がこの世に下天される際に現身となるアバターなのよ」


 そう、この像にセレマーサ様が乗り移ってこの地では行動するのだったのだが⋯⋯。


「それがぶっ壊れちまってるという事は」

「セレマーサ様がこの世に干渉する術がない⋯⋯という事?」


『そのとおりです』


「ママ! この声は!?」

「このお声は⋯⋯セレマーサ様!」


『いかにも、私がセレマーサです』


 なんと女神のお声が⋯⋯。


「ところでセレマーサ様! この惨状はいったい?」

『この地を襲ったのは、わが姉にして魔王であるソルゾーラである』


 そうあっさりと言った!


「なんだって! 魔王がセレマーサ様の姉だって!」

「言って良かったんですかセレマーサ様?」


『構わぬ。 この地の人間には迷惑な話だろうが我々にとってはただの姉妹喧嘩じゃからな』


 まあそうですよね。


「それでセレマーサ様? この地を襲ったのが魔王ソルゾーラだという事は⋯⋯魔王は復活してしまったのでしょうか?」


『うむ。 それも最悪な方法でな⋯⋯』

「最悪⋯⋯とは?」


『そもそも我と姉は姉妹神でな⋯⋯力を合わせてこの世界を創造した』

「はあ⋯⋯」


 いやそれは今必要な話か?


『姉は昼間を、我が夜を。 姉は破壊を担当し我が再生させる⋯⋯そうやって繰り返しこの世界は何億年も続いてきたのじゃ』


 とんでもないスケールのお話だった。


『しかし今回の、今の時代の文明は私としてもよく出来ていてもう少し、あと1億年くらいは観察したいと思っておったのじゃが⋯⋯姉がそろそろ壊させろと言い出した』


「それは困ります!」


『だろ? じゃから姉には1億年くらい寝ててもらおうと勇者と聖女に力を奪わせたのが約700年前の聖戦だったのだ』


「そんな理由だったんですか⋯⋯」


『それに姉にも滅びゆく者の気持ちを知ってもらおうと姉の持つ『不死の加護』を奪いたかったのだが⋯⋯それに適合する人間が今まで居なくてのう』


「不死の加護って魔王の力なんですか!」


『そうじゃ。 不死の加護だけでなくこの国の者が使うあたえられた加護はすべて魔王の力を無駄に使わせる我の策よ』


「そんな事になってたんだこの国の仕組みって⋯⋯」


「俺⋯⋯もらわなくて良かった」

「ですね⋯⋯私もです」


『まあそう言うな力に善悪は無い。 それにこの国の発展には役に立ったハズじゃ』


「そのせいでこの世界は帝国一強になりましたけどね⋯⋯」


 そう恨めしそうに呟くリゼ様。


『世界中にスキルを配って戦乱の世になるよりは平和だったと思うがのう?』


「それもそうか?」


 わりと納得するシェリルさんだった。


 うーん、このへんは女神の価値観が人間とは違うという事⋯⋯か?

 と私は思うが⋯⋯。


『そしてついに姉の不死の加護を人間に植え付けることに成功して、これでやっと姉も我と同じく老けていくと思っておったのだが⋯⋯』


 なんか個人的な恨みがありませんか女神様?


『その人間がまさか姉を起こすとは思いもせんかった⋯⋯』

「その⋯⋯バカですみません」


 なんで私が謝らなきゃいかんのか?


『いやセレーナ達のせいではない。 すべては先を読めなかった我の責任』


 それはそう。


『まだ姉が復活だけなら良かったのだが⋯⋯問題は不死の加護を持つ人間のカスを集めて、それを核にして現世に復活してしまったということじゃ!』


「それってつまりアドミス皇子とロザンナさんの残りの成分が魔王になった⋯⋯という事ですか?」

『いかにも⋯⋯じゃ』


 ⋯⋯なんてこった。


「ほんとうに余計な事しかしないなあ、あの2人は⋯⋯」


『そして蘇った姉の行動は素早かった。 今度は我がこの世に干渉できないようにするためにそこにあった女神像を破壊したのじゃ』


「つまりこの先、魔王が大暴れしても女神様はなんにもできないという事ですか?」

『そうじゃ。 まあ方法はほかにもあるがな』


「方法? それはいったい?」

『セレーナよそなたのその体を借りたい』


「この体をですか!」

『この女神としての大いなる力の一部といえど収めるには大きな器が必要』


「それって元に戻れるんですか女神様!」

「カイル⋯⋯」


 そう私を守ろうとするカイルだった。


『もちろんじゃ。 それに──』


 そこから先の女神の声は⋯⋯私の頭にだけ直接響いてくるのだった。


(──この我の器にふさわしく拡張するが⋯⋯どうじゃ?)

(それってもしかしてこの幼児体型がボンキュッボンに!?)

(そうそう)

(⋯⋯⋯⋯しかたないなあ)


 ⋯⋯交渉成立!


「──女神セレマーサ様、この体ご自由にお使いくださいませ」


「セレーナ!?」

「本気か?」

「ちょっとマジなの?」

「ママ⋯⋯大丈夫?」


「はい⋯⋯女神様も安心していいとおっしゃってますので。 さあ女神様! この体にようこそ!」


『うむ! その体しばし借りるぞ!』


 そして私の体に落雷のような衝撃が走った!

 私の⋯⋯体が熱い!?


「⋯⋯⋯⋯あれ?」


 私の意識はハッキリとそのままだった。


「あの? セレマーサ様?」

『こ⋯⋯これは予想外じゃったのう』


 そう私の口から別の声が⋯⋯女神の声が漏れる。


『我そのものがすっぽりとおさまる器の広さとは思わんかったわい』


 それを聞き私は──。


(ちょっと女神様! 私のセクシーダイナマイト計画はどうしてくれるんです!)

(し⋯⋯しかたなかろう。 この体をどうこうせずとも入れてしまったのじゃから⋯⋯)

(そんなの関係ありません! さあやりなさい! 私をダイナマイトバディに! いますぐ!)

(それは⋯⋯我の力ではどうすることもできんのじゃ!)


「⋯⋯使えない女神め」


「セレーナ?」

「まさか精神汚染が?」

「セレーナの暗黒面がついに!」

「ママ正気になって! やさしいママに戻って!」


 は⋯⋯いけないいけない。

 スマイルスマイル⋯⋯にっこり。


「はいみんなが大好きな聖女セレーナですよ~!」


 そう言うしかない私だった。


「よかったセレーナ」

「⋯⋯ありがとカイル」


 い⋯⋯言えない、こんな私の本音はカイルにはカイルにだけは!


(理解ある彼じゃないかセレーナよ)

(やかましい! ちょっと俗すぎないですかセレマーサ様!)


(しかたなかろう⋯⋯女神は退屈なのじゃゴシップに飢えておるのじゃ)

(⋯⋯こっちが魔王なんじゃ?)


(そうかもな。 我が魔王として封じられる時代もあったからのう)


(その時はソルゾーラが女神に?)

(そうじゃ。 しょせんその程度の区別じゃ我と姉はな)


 うーんまあそんなものなのか人と神の距離感や区別なんてものは。


「それでセレマーサ様、これからどうすれば⋯⋯」


 そう私が言いかけたその時でした。


『クカカカッ! やはり追ってきたかセレマーサ』

『この声はソルゾーラ!』


 そう謎の声と私の口から勝手に女神の声が!?


「この声が魔王ソルゾーラ!?」

「どういう事セレーナ!」


 まあ周りのみんなからすれば私の一人芝居に見えるんだろうなあ⋯⋯。


「魔王の気配です! みんな! 周囲に警戒を!」


 そう私が警告したその時だった。


 壊れた柱の影がグニャリと動きまるで触手のように這って近づく!?

 狙いは⋯⋯私か!?


「危ないママ!」

「ルナ!」


 そう私を突き飛ばして庇ったルナに魔王の影が!


「う⋯⋯うがががッ!?」

「ルナ!」


 なんということだろう⋯⋯。

 ルナの体に魔王の影が侵入していく。


「この! ルナから離れろ!」


 私の放った聖なる力が⋯⋯はじかれた!


『くくく⋯⋯狙いとは違ったがこの娘の体はなかなか我になじむではないか』


 しまった!

 ルナは元々陰属性の獣人族。

 魔王の力と共鳴したのか!?


「なら俺の力で! うわっ!?」

「カイル!」


 しかしカイルの光の力もはじくルナだった。

 ──そして。


「ふふふ。 この体なかなか良いではないか気に入ったぞ」


 魔王ソルゾーラが現れた。

 私の大切なルナの体で⋯⋯。


 ⋯⋯⋯⋯たゆんっ!?


「⋯⋯⋯⋯ルナがオトナになってる~~!?」


 そこには私をはるかに超えるセクシーダイナマイトなルナが居たのだった。

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