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月光の聖女幻想記~追放聖女セレーナと未来の勇者たち~  作者: 鮎咲亜沙


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#026 セレーナは見た! 皇子アドミスの悲劇!?

 こうして私達は魔王ソルゾーラに対抗すべく旅立つことになったのだが⋯⋯。


「はあ⋯⋯帝国に戻るのか。 嫌だな⋯⋯」


 早くも私の気分は鬱だった。

 すると同じ馬車に乗っているリゼ様が。


「ここだけの話だけどセレーナ。 ⋯⋯私たちエルリーフ王国を含めたすべての亜人連合国が水面下で一致団結して反帝国組織ケモミミーズを結成しているのよ」


「なんですかそれは?」


 怪しげな⋯⋯しかし甘美な響きもある言葉だ。


「今からおよそ200年くらい前から帝国の亜人族弾圧は始まったけど⋯⋯とくに今の皇帝の時代、つまりあのアグネス宰相が強く亜人弾圧を推し進めているのよ」


「あの人⋯⋯そんな事してたんですか!?」


 それは知らなかった! 私は政治には無関心だったから。


「そうと知っていれば協力なんかするんじゃなかったなあ⋯⋯」


 私は前を走っている馬車に乗っているアグネス様を思い⋯⋯歯ぎしりする。


「ママ⋯⋯あの人悪い人なの?」

「そうみたいね」


 いいのだろうか? このままこのルナをそんな帝国に連れて行っても?


「それでねセレーナよく聞いて。 私たちケモミミーズは今や帝国をぶっ潰す作戦段階に入っている」

「⋯⋯ほう」


 なにやら面白い話ですねえ⋯⋯。


「だからもしもセレーナ達が不当に拘束されるようなことがあれば私達が助けるわ」

「それは⋯⋯心強いです」


「それで相談なんだけどセレーナも⋯⋯」

「私も入れってことですね。 そのケモミミーズに」


「いいかしら?」

「やりましょうリゼ様! ケモ耳の明日のために!」


「ありがとう同士セレーナ」

「こちらこそよろしく」


 そう固い握手を交わす私とリゼ様だった。


「いいのかなあ⋯⋯?」


 そうつぶやくのはカイルだった。


「なにカイルは人間だから帝国は正義とか言うの?」

「いーや。 帝国はクソだと思ってるからどうでもいいけど⋯⋯国民たちが困るのは嫌だなと」


「それなら安心してくださいカイル君。 我々の計画では皇家や悪徳貴族のみを攻撃する手はずなので」

「まあそれならいいか」


 そうカイルも納得したようだった。


「なあ、その皇帝家はともかく⋯⋯悪徳な貴族の基準って何で決まるんだ?」


 そう質問するのは同席しているシェリルさんです。


「それは主に獣人族の奴隷販売に加担しているかどうかですね」


「あーなるほど。 そこかあ⋯⋯」

「なにか言いたいのですかシュエリルさん?」


 シュリルさんはやや困ったように。


「私の行きつけの憩いの店のケモ耳ちゃんたちも、元はといえばそうやって流れてきた奴隷なんだなって」

「つまりシェリルさんは奴隷組織が潰されるのは困ると?」


 リゼ様のシェリルさんを見る目が険しくなった。


「いやいや! そこまで言わないよ! 無理やり奴隷にする奴らは悪いに決まっている⋯⋯でもさあ」


「なんです? 何が言いたいのですかあなたは?」

「⋯⋯ラビちゃんかわいいし。 会えなくなるのは私⋯⋯困る」


 ⋯⋯私は人間の業の深さを見た気がします。


「⋯⋯ではシェリルさんもケモミミーズに入りませんか?」

「私も反帝国組織に!?」


 まあシェリルさんにしてみればいきなり人生のダークロードに誘われるようなもんだからなあ⋯⋯。


「可愛い子いっぱい居ますよ⋯⋯ケモ耳の」

「⋯⋯⋯⋯入る」


 いいのかそれで?

 そう思うくらいシュエリルさんはあっさり転んだ。


「いいの? リゼ様?」


「こういうどっちつかずはむしろハッキリとメリットのある方に引きぬいた方がいいのです。 それに敵に回すくらいなら欲望に忠実な味方の方が手なずけやすいし⋯⋯」


 意外と黒いなあリゼ様は⋯⋯。

 こういうところはエルフの王族らしいというか。


 ⋯⋯あれ? もしかして私もリゼ様に、欲望に忠実で扱いやすいヤツだと思われてる?


「⋯⋯」


「なにセレーナ?」

「いえ、なんでも」


 いやリゼ様からは悪意は感じない、つまり私のは欲望じゃなくて純粋な愛なんだという証拠だ。


「リゼお姉ちゃんはルナたちの味方なんだね!」

「お、お姉ちゃん!? お姉ちゃん⋯⋯なんて甘美な。 はあはあ⋯⋯」


 リゼ様末っ子だからなあ⋯⋯。

 というか欲望が駄々洩れではリゼ様?


「そういえばリゼ様? アドミス皇子ってどんな状況なのですか?」

「たぶん呪いだと思うけど⋯⋯見てのお楽しみね」


 そう言って思い出し笑いするリゼ様だった。

 そんなに面白い呪いとか聞いたことなんだけど?


 こうして私は不安もあるが内心⋯⋯すごく楽しみに、あのいまいましい帝国に戻るのだった。




 そして私達は帝城についた。


「それではさっそくアドミス皇子のところへ案内してくださいアグネス様」

「すぐにか? 少しは休んでいいのだが⋯⋯」


「さっさと出ていきたいので。 よからぬことを考えられると困るし」

「⋯⋯そうか。 感謝する」


 これはなんか企んでたっぽいアグネス様だったが⋯⋯アドミス皇子を思うのは嘘ではないとわかる態度だった。


「それでアグネス様。 呪いだって聞いたんですけど?」


「呪いか⋯⋯そうだといいのだが」

「あれ? 呪いじゃないの?」


 リゼ様の言う事と違うな。


「⋯⋯なんにしても診てくれ。 そして治せるなら治して欲しい、アドミスを」

「まあ善処はします」


 私は若干不安になりながらもアドミス皇子の自室を目指すのだった。

 そして記憶にあるアドミス皇子の部屋についたのだが。


「アドミス! お母さんよ! 入るわよ!」

「入るなバカ! ほっといてくれ! 一人にしててくれ!」


 そう部屋の中から声が聞こえる。


「わりと元気そうですね、アドミス皇子は?」

「⋯⋯まあ健康には違いない」


 そうふさぎ込むアグネス様の方が重病そうにみえるくらいだ。


「でもまあ⋯⋯さっさと治して帰りたいの⋯⋯でっ!」


 私は持っていたモーニングスターで引きこもりの扉を粉砕したのだった。


「なんだ!? 勝手に入って来るなよな!」


 そう聞こえるアドミス皇子の声の方を見ると⋯⋯ベッドの上でシーツにくるまって隠れている皇子を発見した。


「往診の時間で~す」


 そう私はズカズカと近づく。


「誰だお前!? お母さん以外近づかないでよ!」


 ⋯⋯?

 あれ?

 アドミス皇子⋯⋯私の声がわからないのか?


「記憶喪失?」

「⋯⋯一部覚えておらん」


 そうアグネス様が後出しの情報を追加する。


 まいったなこれは⋯⋯。

 さすがに記憶喪失なんて治したことが無いので出来るかな?


 しかしまあ私の事を覚えていないのならむしろラッキーかも?


「ほ~らアドミス皇子、私が治してあげますからお顔見せてください⋯⋯ねっ!」


 そう隠れているシーツを強引に剥ぎ取る私だった。

 ⋯⋯⋯⋯!?


 ぴょこん♪

 モフンッ♡


 ⋯⋯ぐはっ!?

 私は悶絶した!


「え~ん! え~ん! お母さん! この人が僕をいじめるの!」

「ああ⋯⋯アドミス。 よしよし」


 そうアドミス君(?)を抱きしめて可愛がるアグネス様だった。

 そんなアドミスを私は観察するが⋯⋯。


「獣人族?」


 そこには可愛らしいケモ耳と尻尾のあるアドミス皇子だったのだ。


「男はオオカミだって本当だったんだ⋯⋯」


 アドミス皇子のいつも被っていた王冠の下にこんなチャーミングなケモ耳があったなんて⋯⋯。

 もし知っていれば私との関係も少しは変わっていたかもしれないなあ。


 ⋯⋯というか!


「ケモ耳は置いといて⋯⋯幼児化している?」


 そう、明らかに若返っている⋯⋯というか子供だった皇子が幼児になっている。

 これはいったい?


「ねえセレーナ、これって呪いかしら?」

「⋯⋯どうなんでしょうね?」


 私は知らない、こんな症状の呪いの存在は。

 そしてかすかな呪いの気配すら感じないアドミス皇子だったのだ。


「いったいどうしてこうなったのですかアドミス皇子は?」


 こうしてアドミス皇子がこうなった理由がアグネス様の口から明らかになるのだった。

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