#020セレーナのマイホーム計画
「やっぱり家を買いましょう!」
そう私はカイルとルナに言った。
「家か⋯⋯まあ長期的に見ればこの宿暮らしよりも安上がりがからな」
「うー! ママと一緒のお家~!」
とりあえず私のこの提案には好意的な意見だった。
「やっぱりルナちゃんの教育的に、このすさんだ宿暮らしはいけないと思うのです」
「まあここは、あれくれ者のたまり場だからなあ⋯⋯」
私は思う。
暖かい家庭で育ったカイルはまっすぐに成長したと。
でも大聖堂の冷たい環境でしごかれまくった私はほんのちょっぴりだけひねくれてしまったと⋯⋯。
だからこそこの純粋無垢なルナちゃんには正しい暖かい家庭が必要だと!
「しかしお金はどうする? 俺たちの稼ぎで家を買えるだろうか?」
「そうね、だからその辺を今日はノインさんに相談しようと思うのよ」
そう言いながら私達は今日も冒険者ギルドへと向かうのであった。
そして依頼探しはカイルに任せて私はノインさんと話す。
「あのノインさん?」
「あらセレーナ、どうしたの?」
ノインさんは今日も綺麗で優しそう。
私もこんな素敵な大人の女になりたいな!
「あの私達⋯⋯持ち家を持ちたいのですが」
「なるほど⋯⋯マイホーム? いえパーティーハウスかしら?」
「そうです。 それでなにかいい方法はないかな⋯⋯と?」
「うーん、ここは不動産屋じゃないんだけど⋯⋯」
そう困った顔のノインさんだった。
たしかにこの話は冒険者ギルドの管轄外だろう。
聞く相手を間違えたなこれは⋯⋯。
「じゃあ不動産屋ってどこにありますか?」
そう私が聞いた時だった。
「そうだわ! コレがあったわね」
そう言いながらノインさんは引き出しの奥からやや古びた紙を持ってきた。
「なんですかそれは?」
「依頼書よ。 ⋯⋯かなり古いけど」
たしかにやや色あせた紙だったそれは。
「そんなに長い間の未解決依頼なんですかそれ?」
「そうなのよ。 でも⋯⋯聖女の⋯⋯セレーナなら解決できるかもしれないわね」
聖女を小声で言うノインさん⋯⋯どういう事だ?
私とその依頼に何の関係が?
「この古い依頼はいわゆる事故物件の除霊なのよ」
「除霊⋯⋯ですか?」
「セレーナは死霊払いはできるかしら?」
「ええまあ⋯⋯」
迷える霊を浄化するのは聖女の嗜みですから。
「この家は昔、悪魔契約をしようとした魔道士が住んでいた家なんだけど⋯⋯その家主が死んで呪いの館になったのよね」
「はあ⋯⋯」
「それで取り壊して新しく家を建てようとしたらしいんだけど⋯⋯悪霊化したその魔道士がいまだに居座ってどうにもならないのよ」
「それの浄化ですか?」
でもそれと私達のマイホームの関係は?
「それでね。 もしもセレーナがここを浄化できたら⋯⋯格安で譲ってもらえるわよ」
そうニッコリ笑顔で呪いの館をお勧めするノインさんだった⋯⋯。
「⋯⋯ちょっとみんなと相談します」
こうして私はカイルとルナに相談するのだった。
「──というわけでどうする? その家?」
「わくわくホラーハウス!」
よくわからないがルナちゃん的には大満足物件らしい。
「うーん、それ俺たちが住めるのかな?」
「それは見てみないと何とも言えないけど⋯⋯」
この時ノインさんが話しかける。
「少なくとも依頼解決の謝礼は出るわよ。 えっと金貨50枚くらい」
「「ごっ50枚!?」」
「それ美味しいの?」
めっちゃ大金だった!
「でもそのままだと評判が悪いから立て替えて売ることになるから⋯⋯そのまま住むのならその依頼料と相殺で超お買い得物件なのよね」
うーん、なるほど。
「どうするカイル?」
「前提条件としてセレーナはその悪霊を払えるの?」
「たぶん」
「なら受けるだけ受けてみようぜ」
「そうね」
こうして今日の私達の依頼はこの呪いの館の浄化になるのだった。
そしてやってきました呪いのお家!
「⋯⋯ここ、ギルドからちょい遠いけど静かでいい場所だなあ」
そうカイルは周りにいるガイコツから目をそらして言う。
「お肉無いね⋯⋯」
なんかガッカリなルナちゃん⋯⋯もっと食べさせないといけませんねこれは。
「お仕事が終わったらお腹いっぱい食べましょうねルナ」
「うん!」
癒しだ、この子は⋯⋯。
やっぱりこの子には暖かいマイホームが必要!
「さ~てママ、がんばるからね!」
私は両手を合わせて祈りのポーズになる。
「迷える死者の魂よ。 鎮魂の祈りでその無念を晴らしたまえ!」
私の浄化の魔法が発動した!
「ギギッ! ガガッ?」
「おお! スケルトンたちが!」
私の聖属性の魔法でスケルトンが浄化されていく⋯⋯。
サラサラと光の粒となって消滅していくスケルトンたち。
「⋯⋯よし! 楽勝ですね!」
「すごいよセレーナ!」
「ママかっこいい!」
「えへへ~そうかな~!」
褒められるってこんなにも嬉しいんだ!
そうだよ! 子育ても教育もやっぱりほめて伸ばさないと人間まっすぐに育ちませんよね!
私は決めた! ルナちゃんを褒めて育てようと!
そう考えていたその時だった。
カタカタカタ⋯⋯⋯⋯!
「なんか家が⋯⋯揺れている?」
「ママ! なんか来る!」
館の玄関が開き⋯⋯そこから巨大な悪のオーラをまとった死霊が出てきた!
「我が館を荒らす者に死を!」
「コイツが親玉か!」
「みたいですね依頼書の!」
依頼書に書かれていた元のこの屋敷の主の魔道士に違いありません。
⋯⋯完全にリッチ化してますが理性は残って無さそう。
「迷える死者よ! さあ旅立ちなさい!」
そう私は聖なる魔法を解き放つ!
「シャドゥ・ウォール!」
「んなぁ!?」
陰属性の魔法で相殺された!?
コイツ⋯⋯光属性の反対の陰属性を使えるのか!?
「セレーナ!」
「これは⋯⋯マズいかもしれません!」
私にはこういうタイプとの戦闘経験がない⋯⋯。
だからどう立ちまわっていいのかわからない。
私に出来るのは強力な魔法のゴリ押しで浄化するだけだけど⋯⋯それがこのリッチには通用しそうもない。
「ママを助ける! とりゃ~!」
「ルナちゃん!」
ルナがリッチに襲い掛かった!
ルナはまだ小さい獣人族の子供だけど、人間族とはくらべものにならない身体能力を現時点で持っている。
その破壊力パンチでリッチをぶん殴ったのだが⋯⋯。
「ふにゃ~!?」
⋯⋯やっぱり物理は効かないか。
ルナのパンチはリッチの体をすり抜けてしまった。
「撤退だ! 逃げるぞセレーナ!」
「でも逃げたら家が!」
「そんな場合か!」
たしかにその通りだった。
このリッチの浄化が10年も放置されていた理由がよくわかった。
「⋯⋯わかりました逃げま──」
そう私が言いかけた時!
「うにゃ~~~~!?」
「ルナちゃん!?」
ルナがリッチの影の触手に囚われてしまった!
「ルナを放せ!」
私は浄化魔法でルナを助けようとするが⋯⋯。
「くっ⋯⋯ビクともしない!」
このリッチは生前はすごい魔道士だったのだろう、それがリッチ化してさらに強くなっている。
でも何としてでもルナだけでも助けないと!
しかしその時だった!
私の足元に迫った影の触手が私まで拘束してきて──!?
「きゃあっ!」
「セレーナ!」
「だめカイル! 近づいちゃダメ!」
このままだとカイルまで⋯⋯捕まる。
「セレーナ! 手を!」
「カイル⋯⋯」
私の左手とカイルの右手が触れる⋯⋯。
⋯⋯その時不思議な事が起こった!
ピカーっと私とカイルの手が光ったのだった!
「これは⋯⋯精霊刻印!?」
それはかつて私とアドニス皇子の間にあったあの刻印です。
それが私とカイルに!?
しかしなぜ?
精霊刻印は皇帝家にのみ使える秘術のハズなのに!?
「ち⋯⋯力が沸いてくる!」
それは私とカイルの魔力がひとつに繋がったからだった。
カイルの持っていた剣に光のオーラが宿る!
「俺の剣が⋯⋯光っている!」
そうか! カイルは光属性!
でも今までは基本魔力量が低すぎて発動できなかったんだ!
「カイル斬って! その剣で!」
「おお! セレーナ!」
光り輝くカイルの剣はリッチの影の触手を切り裂き⋯⋯私とルナをたやすく助け出した!
「すげえ⋯⋯これが俺の力なのか?」
私の魔力のおかげだとはわかっているのだけども⋯⋯それでも!
「カイル⋯⋯私の勇者様⋯⋯」
いま私の目の前で光の勇者が誕生したのだった!
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