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月光の聖女幻想記~追放聖女セレーナと未来の勇者たち~  作者: 鮎咲亜沙


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12/27

#012 アドミスとロザンナは成人し⋯⋯加護を授かった!

 セレーナも死んでせいせいした俺は、ようやくロザンナとのハッピー結婚生活に向けて準備を始めた。


 この僕とロザンナの結婚式だ! それはもう帝国の歴史上もっとも華やかで贅沢にしないとね!

 そう思って準備していたら母上がその経費を見てひっくり返っていた。


「お金を使いすぎじゃ、このバカ息子!」


「なに言ってるんです母上? この僕とロザンナとの結婚式ですよ? これから未来の皇帝たる僕の存在を世界に知らしめるのに、このくらい当然じゃないですか!」


 そう僕は言い切る。


「そうだけど⋯⋯そうだけど。 やっと余裕が出てきたとこだったのに⋯⋯」


「なら税をもっと上げればいいじゃないですか母上」

「できるか! もうギリギリの税率なのよ! これ以上税を上げたら国民が死ぬわ!」


 まったく母上は優しくて困る。

 国民などこの皇帝家のために死ぬのが役割だというのに。


 そうだ! 僕が皇帝になったらもう甘やかさないでもっと税を搾り取って、この帝国を繁栄させないとね。

 そう僕は約束された栄光の未来を見たのだった。


 これは何も僕の妄想なんかじゃない。

 これが僕が未来の皇帝であるなによりの証なのだから!


「⋯⋯まあいいわ、よくないけど。 それよりもアドミスとロザンナはそろそろ成人の儀の準備をしなさい」


「は~い、やってます」

「ならいいわ」


 この成人の儀というのは、この帝国に住む全ての民が15歳になった時に神殿で加護を授かるというものだ。

 まあこの時ばかりは偉大なる血統の僕も民草と同じように儀式を受ける屈辱を甘んじよう⋯⋯まあ神の前だしね。


 とは言っても僕が授かる加護はもう決まっている。

 それは代々皇帝になる者は全て『未来予知』だからだ。


 そうこの未来予知のおかげで今日の帝国の繁栄があるといっても過言ではない。

 僕たちと違って無能な臣下を率いるこの偉大なる権能⋯⋯まさに皇帝の証というやつだった。


 だからまあ僕は僕の事は気にしていなかった。

 問題は⋯⋯僕と同じ日に成人の儀を受けるロザンナの事だ。


 ロザンナは素晴らしい聖女だ! 胸も大きいし!

 だから絶対に素晴らしい加護を授かるに違いない!

 そう僕は確信していた。


 それに同じ日に産まれたロザンナと、こうして一緒に加護を授かり結婚する⋯⋯。

 やはり僕の運命の人はロザンナだ! そう僕は確信した。


 セレーナが居なくなって本当によかったよ!

 僕はセレーナに不満はあったがべつに嫌いでも無かった。

 ただ存在だけが迷惑だっただけなのだ。


「⋯⋯まあついでにセレーナの墓でも作っておくか」


 このくらいしてもバチは当たらないだろう。

 いやむしろ神様もお喜びになるに違いない!


「さあ忙しくなるぞ!」


 そう僕は栄光の未来へと歩き出すのだった。




 そして1週間がたった時、僕とロザンナは大聖堂へとやってきた。


 まあ庶民ならその辺の教会で儀式するのだが僕やロザンナだとこの大聖堂しかありえない。

 これが選ばれし者の待遇というものだ。


「ロザンナ、久しぶりの大聖堂だ懐かしいか?」


 あの運命の婚約破棄からずっとロザンナは僕と宮殿で暮らしていたから大聖堂へは戻っていなかった。

 まあもう十分に優秀なロザンナにはこの大聖堂での修行など必要ないからな。


「懐かしくなんかありませんわ。 こんなカビくさい古いだけの建物に」


 まあたしかにロザンナには似合わないなこの大聖堂の神殿は。


「それもそうだな。 なら僕たちの結婚記念に新しく建て替えるか!」

「いい考えですわね、アドミス様!」


 そう話し合っていた僕たちのところにジジイがやって来た。


「お見えになられましたなアドミス殿下⋯⋯」


 そう疲れ切った声で話しかけるこのジジイがこの大聖堂の神官長だ。

 ⋯⋯とっとと引退して隠居すればいいのに、もう歳なんだから無理するなよ。


「おうジイさん! この僕が加護を貰いに来てやったぞ!」

「こんにちは神官長」


 そう僕の隣で優雅に挨拶するロザンナだった。

 素晴らしい淑女教育の賜物だ。


 これがセレーナときたら⋯⋯ずっと聖女式の地べたに座り込むみっともないあいさつで恥ずかしかったからな。


「もうすっかり皇后気取りですなロザンナ様」

「あたりまえじゃない」


 そう答えるロザンナだった。

 結婚式はまだなんだけど、もうお似合いの夫婦とか⋯⋯えへへ!


「おいジジイ! 俺たち若者は時間が惜しい! ジジイと違ってな!」

「⋯⋯わかりました。 さ⋯⋯こちらへ」


 そう僕たちを案内するジジイだった。

 そして僕達が案内されたのはこの大聖堂の中央部⋯⋯この銀の女神像の前だった。


 ⋯⋯胸無いよな、この女神。

 まるでセレーナみたいだ!


「さあアドミス殿下、ロザンナ様。 儀式を始めますぞ」

「ああ、わかってる」


 この時ばかりは僕とロザンナも地に膝をついて祈るポーズだ。

 いくら僕が偉大なる皇帝になる男だとしてもやはり神は別格だからな。


「おお! 偉大なる大地の地母神セレマーサよ! 今日成人を迎えるこの若き者たちに未来への道しるべを与えたまえ!」


 そうジジイがもったいぶって言う。


 しばらくすると僕の目の前に神の気配を感じた⋯⋯。

 ⋯⋯居る。

 そこに居る!

 見上げたい⋯⋯そう思ったが金縛りにあったように僕は動けなかった。


 くそ! 女神の胸を見るチャンスが!

 いくら貧乳でも一生に一度しか拝めない胸なら見ないと損だ!


『⋯⋯そのまま跪きなさい』


 うぐっ!?

 ものすごいプレッシャーで僕は地べたに押し付けられた!?


「あ⋯⋯あががが⋯⋯」


 隣のロザンナも同じように地面に突っ伏している。


『貴方は皇帝の後継者ですね。 ⋯⋯まあいいでしょう、これまで通りの『未来予知』の加護を授けます』


「お⋯⋯おお!」


 僕の中に大いなる加護が宿るのを感じる!

 へへっ! やはり僕は偉大な皇帝になる男だ!


『そして貴方には⋯⋯セレーナではないのですか?』


「違うわよ! あんな女といっしょにしないで!」


 まあ女神からすると人間の区別がつかないのも仕方ないのかもしれんが⋯⋯。


「これは僕の妻になるロザンナだ、女神よ!」


 そう僕は言ってやった!


『皇帝の末裔よ? 貴方の妃はセレーナではなくこの女で間違いないのですね?』


「ああそうだ! 僕が世界でただひとり愛する女だ!」

「アドミス様♡」


 しばらく僕とロザンナは地面に押し付けられたままだった。


『まあよいでしょう、それがこの帝国の選択ならば何も言いません。 しかしこの帝国には試練の時が迫っています』


「なに!?」


『その試練に立ち向かう未来の皇帝を支える聖女が貴方だというのなら⋯⋯仕方がありません、それなりの加護を授けましょう』


 そう女神が言った。


 なにかおかしい!?

 そう僕が思ったその時だった!


「ぎゃああああああぁ!」

「ロ、ロザンナ!?」


 僕の愛するロザンナが火だるまになっていた!


「ロザンナ! 女神っ! 貴様、何をする! ロザンナを開放しろ!」


『耐えなさい聖女よ。 この焔の試練に⋯⋯』


「うぎゃあああああああああぁ!?」


 僕のロザンナが燃えながらその場でバタバタと悶える。


「や、やめろ! ロザンナが死んじゃう!」


『⋯⋯終わりました』


「⋯⋯え?」


 そう女神の声がして僕はロザンナを見た。

 ⋯⋯そこにはヒトガタに燃え尽きた塵があった。


「あ⋯⋯ああ。 ロザンナが⋯⋯」


 涙が溢れてくる。

 そして次にこみ上げるのが女神への憎しみだった。


「女神! きさまぁ!」


 僕は生れてはじめて感じる憎しみを抱いた。


 ⋯⋯だがその時だった!

 ピカー!

 ロザンナの灰が再生する!?


「はあ! はあ! 死ぬかと思った!」

「ロザンナ! 無事だったのか!」


 ロザンナは無事だった!

 着ていたドレスは完全に燃え尽きて、そこには生まれたままのロザンナの美しい裸体が!?


「「「「「おっ! おお~!」」」」


 この儀式を見守る男の神官どもが見ていた!


「やめろ見るな! ロザンナのハダカを見ていいのは僕だけなんだから! 死刑にするぞお前ら!」

「いやぁ! 恥ずかしいですわアドミス様!?」


 僕はなんとか立ち上がり自分のマントをロザンナに着せた。

 ハダカでマントだけ⋯⋯これはこれで⋯⋯えへへ。


「アドミス様⋯⋯ありがとう♡」

「当然の事だロザンナ」


 そう無事を確かめるように僕はロザンナを抱きしめたのだった。

 む⋯⋯胸が当たる!? うへへ⋯⋯。


『聖女ロザンナには『不死の加護』を授けました』


「なんですって!?」


 不死の加護だって!?

 それはスーパーレアクラスの伝説の加護じゃないか!

 やはり僕のロザンナはすごい聖女なんだ!


『聖女ロザンナよ。 今後はその加護でこの未来の皇帝を守りなさい』


「ちょっと、それどういうことよ!」


 そうロザンナが聞き返すが⋯⋯もはや女神の気配はこの大聖堂から消えていたのだった。


「⋯⋯行ったのか女神は?」

「ちょっと誰か服持ってきなさいよね!」


 そして神官の誰かがロザンナにこの大聖堂の聖女服を持ってきた。


「なによこれ! またこの服を私に着ろと言うの! この皇帝の妃である私に!」


「ロザンナは何を着ても似合うから」

「まあアドミス様がそう言うのなら♡」


 まあ本当はもっとハダカ見たかったけど⋯⋯。


 そんな事を考えていた僕は女神の信託であるこの帝国に迫るという試練の事などすっかり忘れていたのであった。

 あの女神の声が僕にだけ聞こえていたなど、まったく知らずに⋯⋯。

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