#010 セレーナはギルドマスターと面会する
私とカイルは受付嬢のノインさんに連れられてギルドマスターと会うことになった。
「俺、大丈夫かな?」
そう心配しているカイルにノインさんは言う。
「安心してカイル君。 ⋯⋯あなたはまだ初心者なのだからギルドマスターもそう過度な期待はしないハズですので」
⋯⋯ハズか?
うーん? どうなんだろう?
確かにカイルは勇者の資質を持っているのは間違いないけど⋯⋯いっぱい城の騎士達を見てきた私の目から見てもカイルは相当な剣士だと思う。
そう私が考えながら黙って付いていくとギルド長室に着いた。
「ギルドマスター! ノインです! 至急お話があります!」
そうノインさんがノックしながら部屋のドアをノックする。
「⋯⋯ノインか? 入れ」
そう声が聞こえた。
そしてノインさんがドアを開けて私達が部屋に入ると⋯⋯。
「⋯⋯ん? 誰だ、それは?」
机で仕事しているギルドマスターが居た。
見た感じ細身だが背の高そうな若い金髪の男性である。
「おはようございます。 こちらは本日ギルドに登録したばかりのセレーナさんと⋯⋯カイル君です」
それを聞きギルドマスターはピクっと反応した。
「⋯⋯ノインがわざわざ登録したばかりの新人冒険者を私のところに連れてくるわけがない。 何者だ、お前たちは?」
そう私とカイルを値踏みするように見つめた。
「おっとすまない、失礼だったな。 私がここのギルドマスターのレオンだ、よろしく若者たちよ」
あんがい優しそうな声だった。
「お⋯⋯俺はカイルと申します!」
「私はセレーナです」
そう私達も挨拶する。
「ふふ⋯⋯礼儀正しいのはいい事だ。 それでノイン、この子らはなんだ?」
そう聞いてノインさんは私達の事を説明しだした。
「こちらのセレーナさんは帝国から破門された聖女だそうです」
「なに!? 聖女だって! それでどのくらいの回復魔法の使い手なんだ!」
そう興奮気味に聞いてくる。
「落ち着いてくださいレオン様⋯⋯」
「ああすまない。 この街では回復魔法の使い手は少ないからな⋯⋯」
そうボヤくように言うレオンさんだった。
「そうなんですか?」
「君は⋯⋯セレーナさんは帝国の聖女という事は、大聖堂に居たのかい?」
「はい、そうです」
「じゃあ知らないのも当然か⋯⋯。 回復魔法の使い手の大半は帝国に居るからなあ」
「そうだったんですか?」
これは知らなかった⋯⋯。
まあ私の知ってる世界なんてごく狭い範囲だからしかたがないけど。
「帝国では諸外国に聖女を派遣して暴利をむさぼっているからな⋯⋯」
「そうだったんですか。 ⋯⋯私には無料で治療するなと言っといてそんな事を」
「君はタダで治療するのかね?」
「べつに無理していなかったので⋯⋯」
それを聞いてレオンさんは考え込む。
「という事はセレーナさんの回復魔法はかなり使えるという事か⋯⋯」
まあ確かに。
ロザンナさんとか2人くらい治療したら疲れたとか言ってたしなあ⋯⋯。
おかげで私には100人くらいの怪我人が割り振られて大変だった。
「まあ一度に100人くらいまでなら⋯⋯怪我の程度にもよりますけど」
「本当か!? そりゃすごいな⋯⋯。 よく帝国が手放したなそんな聖女を」
まあ大聖堂は私を手放す気は無いだろうなあ。
でも国の実質トップの皇子が「出ていけ」と言ったんだから逆らえないハズ。
「私、言う事聞かないから⋯⋯愛想を尽かされたみたいで」
それを聞いてレオンさんは笑う。
「いや失礼! だがよく来てくれたセレーナさん。 心から歓迎しよう!」
そう嬉しそうに言うレオンさんだった。
「あのーギルマス⋯⋯。 こちらが本命なのですが?」
そう言いにくそうにノインさんがカイルを紹介する。
「お? すまないノイン。 ⋯⋯彼も訳ありなのか?」
そういぶかしげにカイルを見つめるレオンさんだった。
「初めましてギルドマスター! 俺はカイルと言います!」
緊張しているのかまた自己紹介するカイルだった。
「⋯⋯君はなんだ? セレーナさんの仲間なのかな?」
「はい! 俺はセレーナと組んで冒険者になりに来ました!」
それを聞き考え込むレオンさんだった。
「うーん、セレーナさん? 君は治療院でも開いてもらった方が収入も安定するし安全だと思うのだが?」
そう私に聞いてくる。
「私は冒険者になりにここへ来ました。 ⋯⋯それに」
そう私はカイルを見つめる。
私は今はじめて自分の使命を感じたのだ!
このまだ小さな勇者様をお守りするのだと⋯⋯。
「君たちは⋯⋯つき合っているのか?」
そうレオンさんは聞いてくる。
「ええっ!? いや⋯⋯俺とセレーナはまだそんな関係じゃ──」
「──違います!」
そうにこやかに言う私だった。
「私はカイルの恋人なんかじゃありません! 私はこの勇者の卵を見守る使徒なのですから」
そう私は手を組んで跪き、カイルを見上げた。
「⋯⋯」
なんかショックを受けたカイルの表情だった⋯⋯?
そして何故か引いているレオンさんである。
「⋯⋯まあがんばれ、若者」
「はい⋯⋯」
そうレオンさんに慰められるカイルだった?
「ところでカイルが勇者とは⋯⋯まさか!?」
「その通りですレオン様! このカイル君の魔力検査をしましたが⋯⋯光属性でした!」
そうノインさんが報告した。
「まさか!? 本当に!」
そうカイルを見つめるレオンさんだった。
その見つめる目は先ほどの私の時のような優しさではなく厳しいものだった。
「あのギルドマスター⋯⋯俺。 ぜんぜん自覚もなにもないんで困るんですが⋯⋯」
そう聞いてレオンさんは険しい表情を元に戻した。
「いや少し焦りすぎたな⋯⋯。 だが勇者の資質ある者が現われし時、魔王もまた現れるという⋯⋯」
それは私も知っている帝国での言い伝えだ。
もともと帝国の初代皇帝が伝説の勇者だったらしい。
それによって国民にも神から加護を授けられるような国を作り上げたのだという⋯⋯。
⋯⋯まあ今の皇帝とアドミス皇子にはほとんど加護が無いみたいだけど。
たぶん神様にも愛想を尽かされたんだろうきっと。
「魔王が現れる⋯⋯それっておとぎ話の?」
「いちおう帝国建国の逸話よカイル」
そう私が教える。
「俺が魔王を倒す勇者⋯⋯?」
そう不安そうなカイルだった。
「そう気負うな若者。 勇者の資質はなにもお前だけじゃない、この世界には何人も居るはずだ」
「そうなんですか?」
「そうだ。 まあ大半は自分の才に気づかなかったり誰にも認められずに消えていくのがほとんどなんだが⋯⋯な」
そう厳しい目でカイルを見つめるレオンさんだった。
「⋯⋯じゃあ俺以外の勇者候補が魔王を倒すってことも?」
「まあありうる話だ。 そもそも本当に魔王が出現するとも限らん。 まあ要するにカイル君には初代皇帝と同じ才能がある⋯⋯と言うくらいに思っておけばいい」
「⋯⋯はい」
そう真摯に受け止めるカイルだった。
⋯⋯不安そう、でもゆっくりと覚悟を決める男の子の横顔に私は見とれる。
「初代皇帝はそれを支えたという聖女と結婚し、あの帝国を築いたのだという」
「え!? ⋯⋯じゃあ俺とセレーナが⋯⋯その?」
なにやら赤くなるカイルだった。
「お任せくださいレオンさん! この私セレーナが、このカイルを立派な勇者へと導いて見せますから!」
そう力強く宣言する私だった。
そうだ! カイルが勇者を目指すというのなら私も覚悟を決めなくっちゃ!
ありがとう神様! 私にこんなお役目を授けてくれて!
そして白い目で私を見つめるカイルだった⋯⋯?
「あー、まあがんばれカイル君」
「はい⋯⋯」
⋯⋯?
男の人同士の話はよくわからないな?
私は基本的に大聖堂の女ばかりの世界で生きてきたからなあ⋯⋯。
そして私とカイルを見てニヤニヤと笑っているノインさんだった。
⋯⋯?
なにか面白い事あったっけ?
うーん、ノインさんは同じ女だけどやっぱり歳の差で価値観が⋯⋯。
「それでどうしましょうギルドマスター? この2人の扱いは?」
そうノインさんの言葉にレオンさんは⋯⋯。
「特別扱いはしなくていい。 だが⋯⋯それとなくチャンスはやれ」
そう指示したレオンさんだった。
「チャンス?」
「どんな才能も、経験や実績を積まねば開花しない。 だが表立ってギルドがお前たちを贔屓もできんからこれが精一杯だ。 ⋯⋯あとはお前たち次第だ」
それを聞き私とカイルは。
「はい!」
「わかりました!」
そう元気いっぱいに答えるのだった。
そうだこの冒険者ギルドから始まるのだ。
勇者カイルの伝説が!
⋯⋯楽しくなってきたああああぁ!
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