③『夢のなかでも婚約者』
王宮の庭園の奥、誰も来ないベンチ。
春の風に揺れる花の音が、昼下がりの陽ざしに溶けていた。
「はぁ〜、おなかいっぱい……お日さまって気持ちいいですねえ……」
ベルが、アーサーの隣でこっくり、こっくり。
そしてそのまま、ぽすん、と彼の肩にもたれてきた。
「……まったく、お前は緊張感というものがないのか」
アーサーは眉をひそめつつも、黙って肩を貸した。
そしてほんの数分、静けさが満ちたその時だった。
「……アーサーさま、だいすき……」
「……ッ!?」
寝言だった。
アーサーは、思わずベルを見下ろす。
彼女は幸せそうに眠ったまま、くすぐったそうに微笑んでいた。
「……なんなんだ……お前は……」
理性に、雷が落ちたような衝撃。
王子としての矜持も、騎士としての節度も、
全部いま、花びらのように吹き飛びそうだった。
(起こすべきか? 否、むしろこのまま……)
(いや、そもそも……“夢のなか”でも、私を想っているというのか……?)
──結論。
「……愛おしいにもほどがある」
その一言を、小さく零した。
寝ているベルには聞こえなかった。
けれど、彼女の寝顔が、ひときわ柔らかくほころんだのは──
きっと気のせいじゃない。
ご覧いただきありがとうございました!
書いた本人が糖度で倒れそうになりましたが、アーサーはもっと倒れてます(物理)
ベルの天然はまだ進化します。アーサーの理性はもう限界突破してます。
この世界が滅びる前に、続きを少しずつ投下予定です。
よろしければブクマ&感想いただけると、王子がさらに砂糖に沈みます!