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ある少女の、身近に。

「⋯あんたか?時間戻したのは?」


 誰もいない廊下にて問い詰めてくる相手は例の編入生のウェルド・リースベルトだった。何故か彼は物凄い敵意をこちらに向けてきている。


「わ、私は知らないです」


 静寂が響き、互いに睨み合いが続いた。余りに目力が強くこちらが怯みそうだ。


「⋯時戻しの魔法はただの一般人が出来るものなんかじゃない。あんたの魔力量は普通の人間以上だ。つまり、あんたなら出来る可能性があるんだよ」


「⋯それは可能性であって絶対では無いんでしょう?」


 というかこの人は一体何なんだ。時間が戻っている事を知っているようだけど、私の知り合いでも無ければ多分ラテルの知り合いでもない。


 そう思考を巡らせているうちに何処かから走ってくる足音が聞こえてきた。そして廊下の角から姿を現したのはラテルだった。


「姉ちゃんっ!、そいつ⋯誰だっけ?何か見覚えが、」


 突然現れたラテルは心配そうな表情から考え込む表情へと変わった。目の前のウェルド・リースベルトに視線を向けるとそちらは何故か口をパクパクと動かし、呆然とした表情をしていた。


「あっ、あんた!あの時の魔術師か!!」


「あぁ、お前あの魔王の家臣の一人だっけ?」


 ラテルに指を指し、ブルブルと震えているウェルド・リースベルトとは反対に、ラテルはポンっと手を叩き、閃いた、という表情をしていた。


「そういえばお前は記憶魔法が得意で有名だったもんね。それで覚えてたのかー。へー⋯」


 あまり興味が無さそうにそういう姿に私はついていけていない。


「つまりこの人は魔族ってこと⋯?」


「うん。そういう事だよ」


 魔族がこうも身近にいるとは、と考えているとその魔族の人は怯えた様子のまま、大きく叫んだ。


「さては時間戻したのもお前か!?魔術師!」


「僕以外に出来る人いないと思うけど」


 ラテルの素っ気ない返答にその魔族は悔しそうに顔を歪めたこの二人には何か因縁でもあるのだろうか。


「ほら、姉ちゃんもう行こう。ルクスって奴も待ってたよ」


 そう言い私の腕を引っ張ったラテルはスタスタと足早に歩き出した。


「あっ!おい、まだ話は終わってないぞ!」


 後ろから魔族の人が追いかけては来ていたがラテルは止まることも無く、それどころか走り出したのだった。

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