ある少女の、ちょっと驚いた。
「ごめんねー!!ランペちゃん!!私が猫じゃらしをあげたばっかりに⋯」
相変わらずのマシンガントークで抱きつきながら何度も謝るルクスちゃんの背中を擦りながら宥めるとラテルも話しかけてきた。
「姉ちゃん大丈夫?怪我は?」
「うん、大丈夫。⋯潰されそうだったけど」
泣きつく勢いのルクスちゃんとは対照的にラテルは心配しているけれど焦りはそんなに感じない。ルクスちゃんを宥めるにもそこらにし、私はあの男子生徒の方に視線を向けた。
「あの、助けて頂きありがとうございます。」
少し遠くから私達の成り行きを見ていた男子生徒は自分が話しかけられた事に気づくと、明るい笑みを見せた。
「いいや、騎士を目指す者として人助けは当然だからな!それよりもあのサイズの生き物には気をつけろよ。場合によっては命にも関わるんだからな。」
彼は浮かべていた笑みとは対照的に真剣な表情で言った。
「はい。気を付けます⋯」
私が答えると、ルクスちゃんは気不味そうに目線を逸らした後、こちらに視線を戻していった。
「⋯あの、遊ぼうって言ったの私なの!だから、私もごめんなさい!!」
「あぁ、分かれば良いんだ。まぁ、猫は可愛いから気持ちは分かるけどな!」
頭を下げていたルクスちゃんは、彼の言葉を聞くと頭を上げ、少しだけ嬉しそうに笑った。ニコニコと柔らかく笑う人達に囲まれていると和むなぁ。そんな事を考えていると黙っていたラテルが声を上げた。
「⋯ところで貴方は?騎士、という事は武術特化科でしょうか?」
「ん?あぁ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺は武術特化科のカルトス・ヒュカルート。一応ヒュカルート公爵家の次男だ。よろしくな!」
今、公爵家の次男と言っただろうか。公爵、と言ったら貴族の中でも上の方の階級だ。私は心の中で少しだけ驚いてしまったが、ラテルもルクスちゃんも「へぇー。」という感じに動じていない。何故?
「お前ら、公爵家って言っても驚かないし媚もしないんだな。」
驚いた、という表情をしながら彼は言った。
「驚いたり媚びたりした方が良いという事ですか?それならヒュカルート様とでも呼べば?」
「ハハッ、普通にカルトスでいいよ。」
ラテルの皮肉めいた言葉に怒ることも無く軽く笑った彼、改めカルトスは貴族にしては珍しく心が広いんだな、と思った。




