ある屋敷の、営業スマイル。
馬車から見える二人の人物。1人が先に降りてきたと思えばもう1人に手を差し出しエスコートをしている。こうった行動は貴族のマナーだ。現代人でも貴族モノの物語を見ている人からしたら、簡単にわかることだろう。1人めに降りてきたのは皇太子殿下だ。その後に降りてきたのがお嬢様。転生者とはいえ記憶を思い出す前の記憶のお陰で所作は完璧だ。所作を覚えるのは高位貴族の定めだ。
カーテシーをしながら奥様が挨拶をした。奥様自身緊張しているだろうに完璧なカーテシーだ。
「私はペカタムの母、ペムシア・シーカレドと申します。シーカレド邸へようこそいらっしゃいました皇太子殿下。ところで本日はどのようなご要件でこちらにいらっしゃったのでしょうか。⋯まさか娘が何か失礼を働いてしまったのでしょうか!?」
さすが奥様凛とした姿である⋯というよう姿から一変。最後の方はかなり慌てた様子になってしまった。元は風格のある人だったのだがお嬢様が問題行動を取るようになってから今の性格になってしまったのである。以前は美しい人というイメージだったが、最近は少し天然気味である。
「いえ、ペカタム嬢は特に問題を起こしたりはしていませんシーカレド夫人。ただ、ペカタム嬢と少し話をしたいと私が無理を言ってしまったんですよ。連絡も寄越さずに申し訳ない。」
奥様の慌てきった問に皇太子殿下は笑顔で答えた。どこか胡散臭い笑み、いわゆる営業スマイルである。社会人なら一度は使ったことがあるだろう。
「⋯あら、そうだったんですのね。私はてっきり⋯いえ、今すぐ庭園にご案内いたしますね。お茶のご用意が出来ておりますから。さ、こちらへどうぞ。」
奥様も本調子に戻り落ち着きを取り戻した。お嬢様が問題を起こしていなかったことに安心したんだろう。数人の侍従と侍女を連れて奥様とお嬢様、皇太子殿下は庭園へと向かった。ということで私たちは追加のお菓子や紅茶の準備だ。
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