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ある少女の、防音魔法。

 ラテルに手を引かれ、皇太子がいた場所から離れた所で歩みを止めた。早く歩いていたせいで少し息が切れる。今世は勉強ばかりで運動は殆していなかったのが盲点だった。


「⋯この辺まで来れば大丈夫か。本当に姉ちゃん大丈夫だよね!?何話してたの?否、話しかけてたのは皇太子の方か⋯」


 口元を片手で覆い、ブツブツと何かを呟いているラテルの様子からいつもの余裕さは見られない。そんなに皇太子はやばい存在なのだろうか。


「さっきも言ったけど大丈夫。普通科の教室の中を覗いてたのを疑われただけだから。それよりラテルこそ何でいたの?というかいつから見てたの?」


 私が尋ねると独り言を呟いていたラテルがこちらに視線を向けた。その表情からは焦りや困惑、恐怖心などの感情が伝わってくる。


「⋯僕は、皇太子の動向を追ってて、そしたら姉ちゃんと接触してたから、」


 少し話しているとラテルも落ち着いてきたのかいつもの雰囲気に戻ってきた。というか動向を追うって尾行?なんでラテルが?


「どうしてラテルが皇太子なんて追ってたの?」


「それは、あいつの行動パターンがいつもと違ったからで、普段ならあのペカタムって令嬢の所に直ぐに行ってた筈なのに今日は違う場所に行ってたから⋯」


 口ぶりからしてラテルは皇太子の様子を普段から見ているらしい。そういえば皇太子も魔法特化科だったか。


「って、姉ちゃんこそあんな所で何してたのさ?まぁ、あのお嬢様の観察か何かだろうけど⋯というかあいつは?ルクス、だっけ?」


「ルクスちゃんは用事があるらしくて今日は一人。」


 そう伝えるとラテルはまた片手で口を覆い、何かを考え始めた。話の流れ的に皇太子とルクスちゃんが関わっているのでは、と疑っているのだろう。


「⋯それより、その皇太子ってそんなに警戒すべき人物なの?確かに何か関わってはいそうだけどわかんなくて。」


「⋯皇太子は警戒すべき人物の中で一番か二番ぐらいだよ。あいつは、」


 そう言うとぐっと拳を握り、顔を背けた。ラテルがこんな様子は見たことが無い。個人的にはざまぁ系のラノベで出てくる馬鹿な男キャラっぽいと思っていたのだがこの考えは辞めたほうが良いらしい。


「⋯ところで皇太子は何処で何してたの?」


「使われてない空き教室っぽい所に入っていったんだけど、中で何があったのかがわからないんだよ。中に入った後は直ぐに扉を閉められて中が見えなかったし、どうも防音魔法を使われていたみたいで⋯」


 つまり、わかった事は無し、という事か。とはいえあの皇太子がお嬢様の所に行かないのは珍しい。この学園じゃ皇太子とお嬢様が仲がよろしい事は有名だからだ。その事に良く思わない人もいるらしいが。


「でもその防音魔法ってラテルが解けばよかったんじゃ⋯?ラテルなら出来たでしょ?」


「⋯それが随分と凝った魔法になってて、防音魔法に感知魔法を複雑に重複されていて。あれは解いたら見つかるやつだよ。時間をかければ解けない事も無いけど、解こうとしてる途中で皇太子が出てきちゃったから。」


「なるほど⋯。」


 その魔法は皇太子が展開したものなのか、それとも他の人物が展開したものなのか。わからないな⋯。


「その後人は出てこなかったの?」


「わからない。皇太子が直ぐ移動しちゃったから。」


 となると本当に真相がわからないな⋯。今度は私が考え込む番になった。


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