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ある少女の、心配。

「⋯そもそも反貴族勢力って何?」


 結局気になって聞いてしまった。⋯否、後回しにして忘れてしまうよりは良い判断だろう。


「そういえば伝えてなかったもんね。簡単に言えば貴族に対して何かしら不満を持っている人間たちの集まりだよ。⋯まぁ、元貴族の人間とかもいたらしいけどねぇ。」


 含みのある言い方で口角を上げてラテルはそういった。ラテルがこういう言い方をするという事はその組織の中でも何か問題が起きていたたのだろう。例えばその元貴族の人間が裏切りをしたとか、そういうものだろう。


 ラテルは人の愚かな行動なんかを見たり聞いたりした時には、いつもこんな嘲笑う様な表情をする。純粋系癒し系だったラテルがこんな表情をする日が来るなんて、私がいない間に何があったんだ。弟の将来が心配になってくる今日この頃。


「姉ちゃん、いきなり項垂れてどうしたの?」


 急に下を向いて項垂れた私に疑問に思ったのかラテルは不思議そうに問いかけてきた。適当に「ちょっとね、」と誤魔化す言葉を出すと、よくわからない、といった顔をした後、私の背中を慰める様に擦ってきた。


(⋯弟よ、慰めてくれるのは嬉しいけど今は君の事について悩んでいるのだよ。)


 そんな事を考えながらも、いつまでも俯いてても何も進まないしラテルにも悪い。そう考え、身体をゆっくり元の姿勢に戻し、気合を入れ直す様にパチンッ、と自分の頬を叩いた。


「ねっ、姉ちゃん⋯?」


 私の様子に先程よりも驚いた様子のラテルが目を丸くしてこちらに問いかけてきた。何度も何度も心配かけたり驚かせたりして申し訳ない、という気持ちが浮かんできた。


「⋯ごめん、ラテル。もう大丈夫!」


 些細な事で悩んでいたとはいえ、ラテルに心配を掛けさせてしまった事には変わらない。しっかりと謝り、不器用ながら小さく笑いかけた。


 その姿を見てまた驚いた表情をしていたラテルの顔がはっ、とした表情に変わり首を横に何度も振った。


「何に悩んでたかは知らないけど、解決したなら良かったよ」


 そう言い、いつもの笑顔を浮かべたラテルの顔にはさっきの嘲笑うような冷たい表情は無くなっていた。その表情に私はすっかり安心し、ついへらっ、と笑ってしまった。

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