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ある少女の、着席。

(あの魔力量でも制限していた、なんて言われた時は腰を抜かしたなぁ)


 そんな事を考えている間にも校長の話は進んでいた。生徒達に椅子に座るように指令を出した後、校長は話をし始めた。それはそれは長い話を。


 初めの方は全員が背筋を伸ばし、姿勢正しく座っていたが殆どの人間が姿勢を崩していた。もう小一時間は経過している。未だに姿勢を崩さない人々はきっと高位貴族の人間や皇族の人間なのだろう。風格が違う。


 とはいえ先程見つけたお嬢様は既に姿勢を崩していた。元の性格からしてもマナーや礼節を守る様な人間でも無いうえに、前世の人格を初めて見た時だって風格やマナーなんてものは見えなかった。


 確かお嬢様の家は公爵家。あの頃はお嬢様の爵位なんて気にもとめていなかったものだけれど、今更ながらあの人は頭が良い人間では無かったのだろうなぁ。それにお嬢様は普通科、つまりそういう事だろう。


 そういう私も既に姿勢を崩している。まぁ、こんな数時間も姿勢よく座るなんて事の方が無理なのだ。本当にこういう所を見ると貴族は大変そうだと思う。


 チラリと両隣を見てみるとラテルは退屈そうな顔をして欠伸をしており、ルクスちゃんの方は既に眠っており、先程から私の肩に寄りかかっている。


 姿勢正しく座っている生徒達だって遠い目をしているし、真面目に聞いている人なんて誰一人いないだろう。


「⋯えー、話はこれぐらいにして、そろそろ始業式は終了にしようかのう⋯何か話のある者はおるか?」


 最後の言葉は教師の方に言ったのだろう。教師が座っている端の方へと視線を向けた。話そうとする教師はいなく、全員が口を閉じている。


「⋯無さそうじゃの、それじゃあ各自教室に戻りなさい」


 そう言い終えるとドアが一人でに開いた。これぐらいの魔法ならこの場にいる殆どが出来る。初歩的な魔法だろう。だからこそ誰一人驚く様子は見えない。


 ドアが開いたことを合図に生徒達は一人、また一人と立ち上がりはじめ、やがて大勢が講堂から出て行った。


「ルクスちゃん、ルクスちゃん起きて。終わったよ。」


 肩を揺するながらそういうと、ルクスちゃんはゆっくりと瞼を開き、小さくうめき声を上げると目をこすった。


「⋯終わった?⋯じゃあ行こー⋯」


 まだ寝起きだからなのかいつもよりも勢いは無く、ゆっくりと立ち上がると開かれたドアの方へと進んでいってしまった。⋯寝起きは寝ぼけるタイプなのか。


「⋯姉ちゃん。僕らも行こうよ。」


 座ったまま私達の様子を見ていたラテルはすくっと立ち上がり、私の手をひいた。


「うん。行こっか。」


 ずっと座っていたものだから体中が痛い⋯


 

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