ある少女の、紹介。
教室の扉よりも大きな扉が閉まっていた。地図が表すにはここが講堂らしいが正解なのだろうか。これで場所が違ったらと思うとゾッとする。
そう考え、周りをキョロキョロと見回してみると近くに一つの看板を見つけた。花瓶や装飾が置いてある豪華な廊下には不釣り合いな看板に疑問に思いながらも覗いて見ると、『入学式会場』と記されている。
確かにここが講堂らしい。確証が取れた事に安心し、胸を撫で下ろす。
「ランペちゃん?入らないの?もうすぐ始まっちゃうよ!」
「あっ、うん。入ろっか。」
ルクスちゃんの言葉を聞き、時計を確認すると始まるまで残り三分程でぎりぎりの時間だ。慌ててドアノブに手を掛けると、ここの扉も簡単に開けることが出来た。
ルクスちゃんの手をひき、中に入るとそこには大勢の生徒たちが集まっていた。全員立って待っており、椅子が無い事を疑問に思ったが取り敢えず中へと入る。
大勢の人がいるが、何となく貴族と平民の違いはわかる。真ん中の方に集まり、数人の塊を作り、それぞれで会話、談笑している者達が貴族達。壁際にポツンと立っている数人が平民なのだろう。
この空気感で貴族でも無い私が真ん中に行く事も出来ないので、壁際の端の方へと向かう。出来るだけ目立たないように壁に沿って歩く。
ルクスちゃんが真ん中の方へと走り出さないかだけが心配だったが、予想とは違い大人しく手を引かれていた。少し疑問には思ったけれど一旦移動したいので後に聞こう。人の少ない後ろの端の方で待つことに決め、そこで止まった。
「ギリギリ間に合ってよかったね。ルクスちゃん。」
「え?あ!うん!」
私が話しかけたのに対し、驚いた様子だった所から何処か別の所に意識が向いていたのだろう。
「ルクスちゃん、何かあった、」
「あっ、姉ちゃん!」
ルクスちゃんに尋ねようとした所でいきなり声を掛けられ今度は私が驚いた。とはいえ話しかけてきた人の正体は知っているため、もう驚かない。少し離れた所から小走りでランペが駆け寄ってきた姿が見えた。
「さっきぶり、ルクス。」
「良かった!ちゃんと来れたみたいで。五分前にもいないから心配したんだよ?⋯で、その人は誰?」
そう言い、ラテルは少し鋭い目つきでルクスちゃんの方へ視線を向けた。それに対しルクスちゃんはポケっとしている。
「あぁ、この子は私の友達のルクスちゃん。それでルクスちゃん、こちら私の弟のラテル。」
そう紹介すると、きょとんとしていたルクスちゃんは何か気付いた様な表情をし、手をぽんっと叩いた。
「あぁー、見たことあると思ったら試験の時の子!よろしくね!弟くん!」
そう言い笑顔で手を差し出したルクスちゃんに対し、ラテルはまだ鋭い視線だ。人見知りでもしているのだろうか。
「⋯よろしく。」
少し間を置いたラテルがやっと手を取った。




