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ある少女と、魔道具。

 教室の中に静まった空気感になり、担当教師の挨拶が始まった。教師の名はアルバート・テリクアードという名だ。そのテリクアード先生は二十代程の若い教師だった。


 眼鏡を掛けており、人好きのする笑みを浮かべながら話す姿から覇気や威厳などは感じられない。テリクアード先生も勿論貴族らしいのだが、私が今まで見てきた貴族達とは随分と違うタイプだ。


「この後は入学式がありますので、準備の出来た生徒から講堂へ向かってください。私はまだ式の準備

が残っているので、先に向かっています。十五分後には式が始まりますから、それまでに着席していてください。」


 少し早口でそう言った先生は焦った様子で呪文を唱え、何処かへと消えてしまった。きっと移動系の魔術だろう。先程から時計を仕切りに確認していた事からもかなり焦っていたのだろう。何故そんなに焦っていたのだろうか。



 ⋯否、今考えても仕方ない事だ。取り敢えず今は入学式へ行く準備をしなければ。準備とはいえやる事は一つなのだが。そう考えながら、先程の先生による自己紹介の時に一緒に説明されたある道具を触る。


 それは、球体型。私のそれは暗い赤色をしており、少し血の色を連想させてしまう。そんな色に少し不満に思いながらも心の底では喜んでいる。


 実はこれ、魔道具であった。学園についての情報が全て詰められているらしい。この球体にこの学園についてを問いかけると、文章になり正面に移されたり、図や表が現れたり場合によって様々なものが現れる仕掛けらしい。


 この学園の生徒は全員持っているらしく、色はランダムで人によって違うらしい。更に持ち主本人の声にしか反応しなく、卒業すると使用できなくなるらしい。安全面も守られている。



 本では見た事があったけれど実物は見るのも触るのも始めてだ。正直に言おう、今私は大変興奮している。魔道具は魔術を何十にも掛け、本っ当に精密に作られているものだ。


 つまり、この世にある全ての魔道具が努力の結晶、発想の塊⋯!これを初めて見て、触れて。喜ばない奴は少なくても魔術関係の人間の中にはいないだろう。クラスの人々も皆、それぞれ魔道具を見たり触ったり、試している。


 ⋯そうだった、今は講堂の場所を調べなければいけないのだった。ついつい興奮すると我を忘れてしまう。持っている魔道具に視線を落とし、意を決し声を出した。


「この学園の講堂の場所を教えて、ください⋯」


 何故私は道具にまで敬語で話しているんだろうか⋯そう黄昏れている間に魔道具が少しだけ光を放った。強い光ではなく、見ている事は出来る。数秒光った後、何故か丸かった筈の魔道具は四角い長方形型になっていた。


 するとその四角い物体に地図のようなものが現れた。その中に一等強い赤い光を放つ点がある。となるとこれが自分の現在地だろうか?


 その赤い点から線が出ている事からこの線の通りに進めば良いのだろう。どれくらいの距離があるのかと思い、恐る恐る魔道具の地図が記されている部分を触り、指を動かしてみると位置が少しずれた。


 なるほど、これは殆どスマホのマップ機能と同じという事だろう。線の方向に沿って指を動かしてみると少し進んだ先に青く光る点が現れた。ここが講堂だろう。


 ⋯良かった。これなら私でも辿り着けそうだ。そう思い、ふとルクスちゃんの様子が気になり、隣を見てみると、何故かルクスちゃんは黒いガラスの様な馬に乗っていた。もう一度言おう。馬に乗っていた。


「⋯えぇ!!?」


 驚き過ぎてガタン、と椅子から立ち上がってしまった。すると驚いた私の様子に気付いたルクスちゃんがこちらを見ると、ニコニコと笑いかけてきた。


「⋯そ、その馬どうしたの??」


「この子?この子はアレクサンタリア!元はただの球体である!」


 そう言いながら「ワッハッハ!!」と高らかに笑うルクスちゃんに私は困惑を隠せない。⋯否、元は球体だったと言っているあたりきっとこの馬は魔道具だ。どういう事?人によって違うということなの?


 

 そう思い、周りを確認してみると、教室の中は混沌だった。ある人は大きく空気中に地図が現れる形状。小さなマスコット型の形状。矢印が先端に付いた棒状の形状。何故か人形のお姉さんの様な形状のものもいる。


 ⋯え?本当にどうなってるの??え?


 こんな状況で困惑してしまうのは仕方がない事だと思う。もうわけがわからない。⋯本人が考えた形状になるという事だろうか?否、でも私はスマホ型になって欲しいと願ったわけでは無い。


「⋯え?え?え?」


 不味い、全くわかんない。どういう事なんだろうか一体。


「そうだ!ランペちゃんも一緒に乗って行こうよ!!それが良い!!」


 私が困惑し、悩んでいる間にルクスちゃんは私の腕を引っ張り、軽々と馬の上に乗せた。


「え?え?」


 状況の理解が追いついていない私とは対照的に、私の前に座るルクスちゃんはずっと笑っている。


「それじゃあ、しゅっぱーつ!!ちゃんと捕まってよー!!」


 そうルクスちゃんが言うと馬がいきなり走り出した。それと同時に何故かスマホ型の私の魔道具は浮かび上がり私の横を移動しだした。


 そんな中私はルクスちゃんの背中にくっつく事しか出来なかった。正直失神しそうだ。




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