ある少女の、安心。
普段なら天使の様に愛らしい綺麗な黒髪を靡かせながら走り寄ってくるルクスちゃんの姿が今は小悪魔の様に思えてくる。これ以上私を目立たさないで頂きたい。
「ルクスちゃんも合格したんだねー!しかも同じクラスだよ!嬉しい!!」
そう言い、出会ったときのように手を握り大きく振るルクスちゃんに相変わらずだな、と呆れ半分安心半分といった変な心地になった。
「⋯私も、同じクラスになれて嬉しい。」
目立たされたのは少し酷いとは思ったが、また再開出来て嬉しい気持ちも本当だから、思った事を伝えた。気持ちはしっかり伝えないと後々後悔してしまう事になってしまうかもしれないからだ。
「良かった、良かった!!」
ルクスちゃんは今日も元気いっぱいだ。ニコニコと笑いながら未だに腕を振っている。腕が痛くなってきた。そう感じ解いてもらおうと思った頃、パッと手を離し、今度は私の隣の席へと付いた。
「お隣もーらい!いやー、ギリギリだったよー⋯一日目から遅刻なんてしたら酷い目に合うよー、きっと!」
そう言い、疲れたのか机に突っ伏し腕を伸ばし始めた。この周りを全く気にしない所は正直少し尊敬してしまう。
「お疲れ。何でこんなにギリギリだったの?」
そう質問すると同時に予鈴が鳴った。本当にギリギリだったようだ。教師が来ていなかっただけ運が良かっただろう。
「んー⋯とね。寝坊しちゃった!!」
私の質問に身体を起こし、頭を掻きながらえへへっ、誤魔化すように言うルクスちゃんに「あー、なるほど。」と返した。少し呆れたが合点がいった。
すると、小さめではあるが外からコツコツという足音が聞こえた事から多分教師が来たのだろう。隣でゴソゴソと鞄をあさり、教材などを出しているルクスちゃんを横目に見た。
「⋯先生そろそろ来るっぽいから静かにね。」
小声でそう伝えるとルクスちゃんは何故来ている事が分かったのかと、不思議そうな顔をしたが直ぐに「分かった!」と小声で返してくれた。
先程までルクスちゃんや私に向いていた視線達は既に参考書の方へと戻っており、少し安心し息を付いた。私も初日から教師に目をつけられるのも面倒なので参考書へと視線を戻した。
ルクスちゃんも大人しく参考書を読み込んでいる。これなら少なくとも教師に目を付けられる事は無さそうだと思い、また安心した。
参考書に視線をおとし、数秒経つと案の定あの大きなドアから教師が入ってきた。それと同時に全員が参考書を机の中にしまった。




