ある少女の、回想。
先に馬車が来た事に気付いたのは私だったが、直ぐにラテルも馬の蹄や馬車の動く音に気付いたのか、馬車が来た方向に振り返った。
「馬車来たし早く乗ろう!」
未だに少し照れた様子のラテルが焦ったように馬車へと駆け込んでいった。その様子をぼうっ、と見つめていた私だったが、置いていかれても困る為、ラテルを追いかけた。
馬車に乗ると既にラテルや、他の学生達が座っていた。他の人々の迷惑に掛けないように、静かにラテルが座る座席へと向かい、座る事にした。
「⋯そこそこ人いるね。」
私達が住むこの町はそこそこ学園から離れており、てっきり私達以外には人がいないのかと思っていたのだ。
「そりゃ、あの学園有名だし名門だからね。遠くても良いから通いたいって人は結構いるんだよ。」
ラテルの返答に前世の高校時代でのある出来事を思い出した。
そう、あれは私が高校三年生。つまり、進路について迷っていた時期のことだ。あの頃は何に対してもやる気が起きず、やりたい事も無かった。だから進路について、進学するか、就職するか迷っていたのだ。
そんな感じで進路も決まらず、親や教師の顔を曇らせる日々が続いたある日の休み時間の事だった。そこの高校はスマホの使用が休み時間は許可されていた為、いつも通りスマホを適当に弄っていた。
その時に教室にいた数名が机を囲んで、雑談をしている様子に聞き耳を立てていたのだ。
「てか、あの有名大行くとか、ま?」
「ま。」
最初は適当な雑談をしていた為、私も興味は無かったのだが、丁度自分の悩んでいる事を話していたから聞いてみることにした。
「えっ!?宮野、本当にそこ行くん?俺それ噂だと思っとったわ。」
そう言いながら笑うクラスメイトの、⋯何だっけ、名前。まあ、Aくんとしよう。そのAくんはスマホを片手に雑に話していた。対して有名大に行くらしい宮野くんはゲーム機を持っている。
「高めの大学行って損はねーし。後々役に立ちそうだしな。」
「その理由であそこ目指そうとする奴、お前ぐらいじゃね?あー⋯頭の良い奴やっぱやべーわ。羨ま。」
そう言いながらもスマホから目を離さないAくん。
「割と進学理由なんてそんなもんじゃねぇの?知らねーけど。」
その返答に「わっかんねー。」と返すAくん。互いにスマホとゲーム機を弄りながら話している。暫くお互い何も喋らずにそれぞれが端末を弄っていたが、唐突にAくんが「ま、いっか。」と言った。
その進路について迷っている私からしたら、結末を出してほしかった。




