ある少女の、手紙。
そんな波乱の合った日から、既に一週間が経過していた。今日は遂に試験の合格発表の日だ。その事から朝からそわそわしていた。
そんな様子の私とは対照的にラテルは全く動じた様子も無く、普段通りだった。その姿を見て、少し自分の姿に恥ずかしく感じたり、悲しく思った。
とはいえ試験が終わったからと、勉強をサボるわけにもいかず、今はいつもの様に勉強中だ。もし合格したとしても勉強に付いていけ無くなり、退学になった、という事も有り得るからだ。
机に向かってカリカリとペンを走らせ、教材に視線を向けているその時、「郵便でーす。」という声が外から響いた。
その声が聞こえると同時に私は駆け出した。今日は両親が働いており、郵便は私が受け取らなければならないのだ。両親は一緒に見れなくてごめんね、と謝罪してきたが私からしたら好都合だ。この慌てようはあまり見られたくない。
玄関から飛び出し、階段を駆け下りると宅配人らしき人が二枚の手紙を持ち、立っていた。
「あっ、イニアルさんで間違いないですか?」
「はっ、はい!」
私のあまりの勢いに少し引き気味になった宅配人のお兄さんは持っていた手紙を「どうぞ」という言葉と共に差し出した。
「ありがとうございます!」とこれまた勢いよく言うと今度は此方の勢いに慣れたらしい、宅配人は「いえいえ。」と笑顔で言い、一礼した後に帰っていった。
その様子を見送った後、深呼吸をし心を落ち着かせる。何とか通常通りに戻った後、階段を登った。玄関の扉を開くと、入口の近くの廊下からラテルが此方を覗き見ていた。
「それ学園から?」
「そう。届きました。」
言葉少なく返事をし、自分の部屋まで進んだ。机の前に座り、二枚の手紙を机の上に置いた。私の隣に座ったラテルは自分の名前が宛先の欄に示されている方を手に取った。
残った方の手紙を私も手に取る。見ると自分の手が小刻みに震えていた。試験も思っていたよりも簡単だったから自信もあるというのにこの有り様である。
ふ、と隣を見ると既にラテルは手紙を開き、中身を読んでいた。その行動の速さに驚いた。一通り目を通したらしいラテルは口を開いた。
「合格だって。」
いつも通りの表情で淡々とそう言葉を放つラテルには驚きを通り越し、称賛してしまう程だ。手紙を雑に机に置いたラテルは此方に不思議そうな視線を向けてきた。
「姉ちゃんは開けないの?」
「否、開けるよ。⋯開けるんだけど緊張してて、」
そう伝えるとラテルは「なるほどね。」と言った後、自分が開ける事を提案してきた。とはいえこれに対しては断った。自分の手で開けたいからである。
意を決し便箋の開け口に手を掛け、ピリ、という音と共に開いた。中には一枚の紙が入っていた。それを開くと文字列が数列並んでいる。その中でも少しだけ大きな字で合格と記されていた。
その文字を見ると、高らかな喜びよりも晏如の息が漏れた。




