ある屋敷のドア前の、お見送り。
屋敷の入口前にたくさんの使用人と奥様だ。彼らの向かう視線の先にあるのは1台の豪華な馬車と1人の人間。そう、ついに出発だ。因みにその使用人達の仲には私含め未成年や新人も入っている。屋敷の人間総出のお見送りだ。視線の先の人間は当然お嬢様だ。御子息、彼女の兄は生徒会の仕事で朝が早いらしい。すでに出発された。ご当主様もご公務で出発されたらしい。
この一家はお嬢様をめっぽう大切にされている。過去のことがあっても変わった姿を見て今までのことを許しているらしい。正直言って甘いんじゃないかと思う。優しさと甘さは紙一重だ。まあその話は一旦置いておこう。
「わかっているとは思うけど本当に粗相には気をつけるのよ!癇癪でも起こしたら本当に⋯」
「もう何十回も同じこと聞いてるから大丈夫!それに私だって少しは成長したのよ!癇癪なんておこさないわ!」
許したとは言ったけれどまだ心配はあるらしい。朝から全く同じ会話をしていたと朝食準備に関わっていた人が話していた。先程は甘いのではと思ったけれど御一家の心が広いだけなのかもしれない。⋯目先の情報だけで決めつけるのは無粋な行動だった。それでは差別みたいなものだ。気をつけよう。
⋯悪役令嬢の今までの行いから嫌うということは差別になるのだろうか。今まで彼女が行ってきたことは許されないこと、というのは言い過ぎなのだろうか。否、彼女が今まで行ってきたことは悪いことだ。これだけは断言できる。だがこれからの彼女を、彼女が行う行動を、ただ嫌いという理由だけで邪険にするのは本当に良いことなのだろうか。
(⋯わからないなぁ)
まあでも今までの考えを口外していなくて良かった。もし喋っていたら、考えただけでゾッとする。
あれこれ考えていたらついに出発するらしい。
「⋯それじゃあ、行ってきます!!」
「気をつけていってくるのよ!⋯行ってらっしゃい。」
ついに物語が始まる。
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