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ある少女の、魔導書の在り処。

 魔力量とは、その者保持する魔力の量の事を示す。これは個人差があり多い者も入れば少ない者もいる。例えて言うならば、小さな蝋燭の火程度の火しか出せない者も入れば、豪快な焚き火の大きさの火を出せる者もいる、といった所だろうか。


 この例えから言うならば一般的な魔力量は小さな蝋燭の火を出せるぐらいだ。何故か貴族の人間は殆どがそこそこの魔力量を持っているらしいが、きっとこの世界の作者が作った適当な設定が関係しているのだろう。


 さて、話を戻すとしよう。ラテルの魔力量はこの一般的な魔力量の数万倍らしい。らしい、というのは私はラテルにこの話を教わったが為にそこまで詳しくないのだ。


 実際にラテルが一般的な魔法の数万倍の魔法を使っている機会を見た事が無い、というのも理由の一つだ。何より、この平和な日常でそんな魔法を使う機会などあってたまるか。


 とはいえ別にラテルを疑っているわけでは無い。見栄を張る性格でも無いし実際ラテルの魔法は断然私よりも凄い。


 

 とにかく、そんな規格外な魔力量のラテルでも、枯渇寸前まで魔力を使わなければ使えない魔術だった、という事だ。


「⋯それっておかしくない?そんな魔術、使える人間がいない可能性だってあった。その状態の魔導書、作り出す意味がない。」


「そうなんだけど、あの魔導書は実際に存在した。誰が、何を思って作ったのかはわからないけれど、それでも作り出されたんだ。」


 その人物はきっと何かしらの目標、願い、何かがあったのだろうか。だがそこに魔導書が合ったという事は結局実現される事は無かったのだろう。その人物の事を思うと少し悲しくなるが、その事が合ったおかげで私はここに生きているのだ。


「あの本、そこそこ劣化が進んでた。何年も昔のものなんだろうね。」


「へぇ。紛失したり壊れて無くて良かったね。そんな昔のものじゃ、危なかったでしょ。」


「そりゃ、宮殿に置いてあったからね。」


 宮殿に、置いてあった⋯?宮殿とはあの宮殿だろうか、皇帝とかが住んでいるらしい立派なお城の⋯?言葉の意味を理解するのに時間がかかったが、理解した瞬間に目玉が飛び出しそうなほどに目を見開いてしまった。


「⋯き、宮殿!?」


 思わずそう叫んでしまった瞬間、ばっ、とラテルに手で口を塞がれた。


「⋯しーっ!あんまり大声出すと母さん達に怒られるよ!」


 ラテルは口の前に人指し指を立て、小声でそう言った。そうだった、と思い出し「わかった。」と伝える為に首を縦に大きく振った。


 するとラテルの手はゆっくりと離れていった。


「⋯あ、危なかった。さっきも怒られてるのにもう一回なんてごめんだよ⋯」


 そう言う私も先程のラテルにつられ、小声になっていた。二人でふう、と安堵の息を吐く。顔を上げると目線があった。


「⋯それより宮殿ってどういう事?私はてっきり何処かの洞窟とかで見つけたのかと⋯」


 その時頭に浮かんだのはRPGゲームなどの洞窟の中で『〜を見つけた!』というテロップが流れる演出だった。


 「⋯?、洞窟の中で魔導書が置いてある事なんて殆ど無いよ?」


 此方の世界では洞窟から宝箱や魔導書が出てくる事は殆どの場合無いらしい。本当に不思議そうな顔をするラテルに少しの羞恥心と気まずさを感じた。




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