ある少女と、魔力量。
料理の手伝いをする為に台所へと向かうと、父と母は既に食材を焼き初めていた。「火を使っている時は台所に入るな」ときつく言い聞かせられていた為、ラテルと目配せをし、大人しく部屋へと戻った。
「…手伝い出来なかったね。」
自室で大人しく二人で本を読んでいた所、ラテルが暇になったのか声を掛けてきた。まだそんなに時間は経っていないのだが本を読む気分ではなかったのだろう。飽きてしまう事なんて私なら多々ある事だし、仕方が無いだろう。
「うん。火使い終わったら食器とか出すの手伝いに行こう。」
そう言葉を発しながら読んでいた本に栞を挟み、ぱたんと閉じた。半分以上は勉強用の教材がびっしりと詰まった本棚の端に今読んでいたロマンス小説をしまった。
此方の世界にもロマンス小説はあるのだが、私の大好きな転生や成り上がり系は無かった。そのため前世で沢山読んでいた恋愛モノの小説は殆ど読まなくなった。今日この本を選んだのも気まぐれだった。
その様子を見ていたラテルも持っていた本を棚へと戻していた。チラリと見えた本の題名は『空間と時間魔法について』という魔法についての本だった。
ラテルが本を読むときは大抵魔法についてや哲学、私なら絶対に率先して読まない種類の本だ。
「空間や時間の魔法ってラテルでも難しいの?」
本の題名を見て、気になった事を率直に聞いてみることにした。言葉を聞き、ラテルは棚から此方に振り返った。
「⋯出来ない事は無いだろうけど難しいよ。時間を戻す時は魔導書を使ったから出来たけどアレがないと直ぐには出来なかっただろうね。悔しいけど。」
少し拗ねた様に頬を膨らませながらそういったラテルにこの話を聞いたことに少し罪悪感を感じたが話を続けた。
「知ってるだろうけど魔導書を使うのと単体で魔法を使うのじゃ全然違うからね。」
「流石の私も分かってるよ。勉強したもん。」
魔導書を使うのと使わないのとでは、全く違う。例えて言うなら料理をする時にレシピを見て行うか、見ないで行うかと言ったところだろうか。
魔導書は既に魔術式も魔力量も全て記載されており、決まった量の魔力を注ぎ込むだけで魔法を使えるようになるのだ。つまり他の事は全て魔導書が行ってくれるのだ。
とても便利なものとも思うけれど、欠点だってある一定の力の魔法しか使えず、更に一度使うと使えなくなる。だからこそ戦闘時などでは全くもって適さないのだ。
「しかしあの魔導書を作った奴が本当に人間なのかが気になるんだよねー⋯」
「?、どういう事?」
「あれ、僕でも魔力量ぎりぎりだったんだよ。だから時間が戻った時なんてほぼ魔力すっからかんだったんだよ。」
その言葉から分かったのはその魔導書の使用魔力量がやばいということだった。




