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ある少年の、焦り。

ラテル視点です。

 魔法特化試験を楽々と終え、さっさと学園を出て、家族が待っている家へと馬車に乗って向かった。馬車が到着し、寄り道もせずに家へと一直線で帰る。


 夕日の光が眩しく、少し鬱陶しく感じる。とはいえ魔法で夕日を消し去るなんて事はしない。出来はするが太陽が無くなったら困るだろうし。


 コツコツという規則正しいリズムを鳴らしながら家の階段を登り、ドアの前に到着した。そのままドアを開け、「ただいま」という言葉を聞こえる様に大きめに言う。すると家の中から二つの足音が迫ってくる音が聞こえた。


 そうして現れたのは父と母の姿だった。姉の姿が無い事に少し疑問に思ったものの「おかえり。」と言う二人の言葉に「うん。」と短く言葉を返した。


「姉ちゃんは?いつもなら真っ先に来るのにいないなんて。」


「え?ランペならまだ帰って来てないわよ?てっきりラテルと一緒に帰ってくると思ってたんだけどそうじゃなかったの?」


 母のその言葉に血の気が引くような感覚がし、家をそのまま飛び出した。「ちょっ、ラテル!?」という母の制止する声が聞こえた気がしたが、その言葉に気をかける暇なんて無かった。


 全力で走りながらも頭の中には不安が駆け巡っていた。あの時のようにまた自分は何も出来ないままに姉が死んでしまうのではないか。危険な目に遭っているではないか。


 しばらく行く宛も無いまま町の中を走り回っていたが、その間に少し冷静さを取り戻した。こういう時の為に探索魔法がある事を思い出したのだ。


 この魔法は一応は高等魔術らしいが手順さえ間違えなければ簡単なものだ。方法は探したい相手の所有物に呪文を唱えるだけだ。こんな事が起きた時の為に、姉のハンカチを一枚盗っていたのだ。


 一度使用すると使用したその物は無くなってしまうが、背に腹は変えられない。それにハンカチぐらいならいつでも盗れる。


 ポケットからハンカチを取り出し、地面に置く。周りに人目も無く、邪魔が入る恐れもない事を確認し、呪文を唱える。


『クエルトル。』


 するとハンカチの周りに魔法陣が浮かび上がり、細い光の線がある方向を示した。


「この方向って⋯!」


 ある事実に気が付き、その方向へと向かう。走っていっては時間がかかると思い、自分自信に浮遊魔法をかける。ふわふわと浮き上がり、そのまま線が示す方へと進む。


 建物が数件建っている町並みから少し、様子が変わり、草木が茂る森の中へと入る。目的の場所が直ぐ近くだと気付き、浮遊魔法をとき、歩き始める。


 草や木を避けながら進んだ先に見えたのは、すっかり暗くなった夜空とそれを綺麗に映し出す湖。そしてその湖の前にポツンと座り込む姉の姿だった。


 見た様子から怪我もしていなく、そのままの姉の姿に安心し涙が出そうになるのを何とか堪え、声をかけた。


「⋯姉ちゃん!」


 その言葉をかけるまでこちらに気付いていなかった様子の姉がビクリと肩を震わせ、こちらに振り返った。その表情からは驚愕している事が伝わってくる。しかし次の瞬間には声をかけた正体が僕だと気付いた様にいつもの表情に戻っていた。


 

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