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ある少女の、寝過ごし。

少し溢れた涙を腕でゴシゴシと拭い取り、外へと乗り出していた身体を戻し、椅子へと座り直す。後は二人共合格している、それを信じるしか無い。


 ルクスちゃんの姿はもう見えなくなった外へと目を向ける。本当に綺麗な景色だ。遠くの景色もよく見える事から今日が快晴で本当に良かった様に思う。


 風が頬を撫でる感覚が心地良く、目を閉じてしばらく感傷に浸っていた。馬車がガタゴトと揺れ、風が草木の香りを運んでくる。そんな中で眠気が襲ってこないわけも無く、気付くと夢の世界へと旅立っていた。



 


 ガタゴトと揺れていた感覚が無くなった事から、ぱっと目が覚めた。まさか寝過ごしてしまったのでは、と焦り、乗務員の人に現在地を聞いてみると降りる場所の一つ前だった事が発覚し、安堵の息を吐いた。


 また寝てしまっては大変なので、目はしっかりと開けたままぼーっと外へと目を向ける。寝る前にいた場所とは違い、沢山の建物が並んでいる。その景色に既視感を感じた。


 

 その時、やっと気付いた。ここはお嬢様の屋敷が存在する街なのだ。屋敷から家へと帰る道では無かったが為に直ぐには気づかなかったが何度か買い出しの為に来たことがあった。


 屋敷のあるであろう方向へと視線を向けるが、距離があるのと建物があるせいでその建物は見る事が出来なかった。


 その事に少し安心した自分がいた。自分が死ぬ事になった原因である場所なのだから正直あまり近づきたく無かったのだ。とはいえその原因の真中にいるお嬢様を止めようとしているんだから、近付かない事なんて不可能だ。


 分かっていた事ではあったけれど、わざと意識しようとしていなかった。考えると後悔しそうになってしまうからだ。これは私が決断した事なんだから後悔なんてしてはいけないのだ。


 視線を正面へと戻し、もう一度屋敷の方向に目を向ける事はもう無かった。



 家の近くの目的である停留所に到着し、馬車から降りた。そのままぼーっと立ち止まっていると馬車は走り去っていった。


 その後も何となく進もうと思えず、立ち尽くしていた。 このまま家に帰ろうとも思えず、これからどうしようかと考えた。

 

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