ある少女の、馬車へ。
唐突に行われた友達宣言が終わり、今は自己紹介の時間になっていた。この短時間で少女は本当に勢いが凄いことが伝わってくる。
「私の名前はルクス!ルクス・マーテス!!貴方のお名前は!?」
終始握った腕に更に力を入れられた。痛いという程の強さでは無いもののそこそこ強い力だ。その腕の力と同じくらいに強い目力でキラキラと目を輝かせてくるその姿は一周目のラテルの姿を彷彿とさせた。
「わ、私はランペ・イニアル。」
短い言葉で自分の名前を伝えると彼女はニコニコとした明るい笑顔で「ランペちゃん!良い名前だね!!」という称賛の言葉を返してきた。
「⋯ありがとう。ルクスちゃんも、良い名前だと思う、」
何か言葉を返そうと思い、出せた言葉は途切れ途切れになってしまった。そんな情けない言葉だったというのにルクスちゃんは頬を更に緩ませてニッコリ笑いながら「ありがとっ!!」と返してくれた。その反応に驚きと晏如の二つの感情を覚えながら私も小さく微笑を返した。
そんなやり取りをしていると丁度チリンチリンというベルの音が聞こえてきた。その音が鳴った方に視線を向けると一台の馬車が停まっていた。行先も家の方向で間違いないようだ。
「あっ、馬車来てた!私この便だけどランペちゃんは?」
「私も一緒。」
そう言うと「じゃあ、急いで乗ろう!」と言い掴んでいた両手の片方を解いて、もう片方の腕をぐいっと引っ張られ馬車へと乗車した。「切符どうぞー。」という声と共に乗務員であろう女性に切符を一枚ずつ渡される。
ルクスちゃんに手を引かれるままに空いている席に座った。この馬車は前世のバスが小さく、質素にされた様な見た目だ。天井は空いており、壁は腰の高さ程しかなく、二人掛けの席が数個と数人が座れる少しだけ横に長い椅子が一番後ろにある。
今日はあまり混んで無く、周りに数人座っている程だ。私達が座った事を確認すると乗務員の女性が「発車してくださーい。」と声をあげた。すると御者が馬を発進させ、馬車はガタガタと揺れながら動き始めた。
「ランペちゃん。ランペちゃんが受けた試験って勉学特化科だよね?魔法特化科じゃなくて良かったの?」
馬車内は基本、他の人もいる為静かにというのがルールなのでルクスちゃんは声を潜めて質問してきた。けれど私にはその質問の意図が分からなかった。
「⋯?。何で?」
「何でって、ランペちゃん魔法使うの得意じゃないの?さっきは魔法を同時に二つも使ってたじゃない!それって本当に凄い事なんだよ?少なくても私には出来ないや。」
私からしたらラテル程のレベルが無いと試験には合格出来ないのでは無いかと思っていたのだがルクスちゃんの言葉から聞いてそうでは無いらしい。
「⋯私って魔法得意なのかな?」
「うん。多分魔法特化科でも合格は出来たんじゃないかな、って思うけどね!」
その言葉に自分にも才能があったことへの喜びと一つの疑問が現れた。




