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ある少女の、試験。

 数多の文字列の書かれた手触りの良い紙にペンを滑らす。カリカリというペンを使った時特有の音が四方八方から聞こえてくる。そう、今は筆記試験中である。


 教科は国語に数学、歴史、魔法学、魔法薬学の五教科がある。前半の三つは前世の世界でもあったもので後半二つは知らないものだ。とはいえどの教科も中身は前世と多少違う。歴史なんて丸ごと違うのだ。


 とはいえ四年間も毎日欠かさず勉強していたお陰かこれと言って難しいと思う問題は無かった。前世では成績が悪かったのもあって今の自分に深く驚いているのが半分。解けない問題が無かった事への安心感が半分というのが今の心情である。


 現在は魔法薬学の試験であり、これが最終科目だった。見直しも終わり、今はする事が特に無く暇だ。と言っても残りは五分程度ではあるのだが。


 

 受験者は少ないとはいえ集まるとそこそこの人数がいる事がわかる。隣の席にはラテルがいて、ラテルも終わっているらしくペンを器用にクルクルと指で回していた。試験中にペン回しをするなんて度胸があるなぁと思った。


 しかし試験監に不正を疑われるのも嫌だったから直ぐに目線を解答用紙へと落とした。その後する事も無くぼーっと机を眺めていると終了時間になったらしい。試験管がベルを鳴らし、「そこまで。」と言い放った。試験監が解答用紙を回収しに回った後、


「これで筆記試験は終わりです。勉学特化科志望は帰宅してください。その他の科はここで指示を待っていてください。」


 そう言い、足早に試験会場から出て行った。試験監の足音が遠ざかった時、数人が身体を伸ばし、数人が近くの人間と会話をし始めた。知り合い通しで来ている人も中にはいるらしい。


 又、その中には試験が終わった為、支度をし足早に帰宅する人間もいた。私も帰ろうかと思い筆記用具を片付け、鞄を肩にかけた。


「ラテル、私先に帰ってるから。」


 分かっているとは思ったが一応声をかけた。筆記用具をしまっていたラテルは顔を上げた。


「うん。気をつけて帰ってね。」


 いつもと同じにっこりした笑顔で、いつもより小さい声量で返事を返された。「分かった。」という短い返事をし、扉に向かおうとした。しかし伝えてない事があった事を思い出し、もう一度振り返った。


「⋯次の試験頑張って。」


 そう伝えるとラテルはさっきよりも晴れやかな笑顔で「うん!ありがとう。」と言った。

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