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ある少女の、受付で。

 私は自分の身長の倍はある校門とその数倍はある校舎を前に圧倒され立ち尽くしていた。今回の人生でここまで大きな建物を見る事は初めてだったからだ。


 前世の時はこれよりも大きくて高い高層ビルという物も見たがこちらの世界では初めてだ。学園というのものはここまで大きくする必要があるのだろうか。至極不思議である。


「姉ちゃん?急に立ち止まってどうしたの?」


 いきなり立ち止まった私に気付いたラテルはこちらに振り向き、不思議そうに問いかけてきた。というかラテルは何故この大きさの建物を見ても驚かないのだろうか。一緒に育った筈なのだけれど。


「⋯校舎の大きさに圧倒されておりました。逆に何でラテルは驚かないの?」


 ラテルはその問いかけに「⋯大きい?」ときょとんとした顔で返事をした。この大きさで大きくなかったら家は犬小屋サイズという事になってしまう。少し間を置いた後、ラテルは何かを思いついた様な表情をした。


「⋯そっか!姉ちゃん前の時は大きい建物は殆ど見た事無かったもんね。あっても働いてた屋敷ぐらいか、」



 「そっか、そっか⋯」と言いながら何度か頷くいた。ラテルの頭の中ではもう納得しているらしい。生憎私はまだわからない。どう言う事だろうか。


「僕は姉ちゃんが死んじゃった後に結構大きい建物は見た事あるんだよね。ここはその中では真ん中ぐらいの大きさかなぁ。」


 そういった後、何故か慰める様な口調で「今世は色んな所見に行こうね⋯」と言われた。しかしラテルよ。私はインドア派である。そんなに旅はしたくない。



 そんな事を入口前で話していると歩いていた大勢の受験者達が少なくなってきていた。試験に遅れて落ちてしまいました、なんて事になってしまっては困る。


 少し不味いなと思った私はこの状況に気付いていない様子のラテルの手を取り、駆け足で校舎へと足を踏み入れた。


 校舎の中は外と同じ様に綺麗だった。流石貴族が通う学園なだけはある。しかしあまりキョロキョロと周りを見回していると田舎者の様に見られる気がした為、今度は立ち止まらず受付らしき場所へ向かった。


 そこはやはり受付だったらしく受験者達が数名並んでいた。その最後尾に私達も並ぶ。今日は特待生の受験のみとの事らしい。つまり貴族と平民を分けているという事だ。私からしたら人数が少なくて助かる。


 思考の海に沈んでいると順番が来たらしく受付けから「次の方どうぞ。」と声をかけられた。


「それでは、受験票はお持ちでしょうか?」


「あ、はい。」


 持ってきた鞄から受験表を出し、受付をしている女性へと渡した。この世界にも受験表という存在はあるらしい。女性はそれに目を通すと、


「確認しました。ランペ・イニアル様は勉学特化科の受験で間違いありませんか?」


「はい。」


「受験会場はそこを右手に曲がった所にございますので向かってください。」


 そう言い、「次の方どうぞ。」と次の人に向かって呼びかけていた。忙しそうだと感じ、「ありがとうございます。」と言い先に受付が終わり、待っていてくれたラテルの方へと向かった。


「待たせてごめん!」


 そう言うと「大丈夫だよ!」と笑顔で返してくれた。そして二人で並んで試験会場へと向かった。


 



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