ある少女の、接客。
私は今回の人生の中で一番のピンチに陥っている。そう、今私はお客様から注文を受けているのだ。後ろの方からはラテルがこちらをじっと見ている気配を感じ、他のお客様から注文を受けている母も横目でこちらを見ているのを感じる。
お客様を待たせるわけにもいけない為、小さく深呼吸をした。だがそんな事で緊張が解れるはずも無く効果は殆ど無かった。その事を残念に思いながらも諦めるわけにはいかないと思い気を引き締めた。
「ご、ご注文はお決まりでしょうか!」
決心を固めて出した言葉にしては裏返った散々なものになってしまった。こんな駄目な状態のままじゃ両親やラテルに迷惑をかけてしまう。そう考え気落ちしてしまった。
「はい。このフルーツサンドイッチとミルクティーをお願いします。」
私の失態があったというのに気にした様子も無くニコニコとした笑顔で返事をされた。そう、その人は小さな子供を見るような生暖かい瞳をして⋯私は小さい子供として見られていただと?
否、確かに私も子供ではあるけどラテルぐらいの小さい子供ってわけでもないし、それこそ大人に近い子供って感じだし。
でもこの視線に今までのお客さん達の対応が小さい子供へのものって感じで、あれ、これって普通に子供っぽいって事?しっかりしないといつまで経っても子供って見られるって事だ。
頭の中が整理出来てきた。つまりしっかりハキハキと話せば大人っぽいと言う事だろう。
「ご注文はフルーツサンドイッチとミルクティーで間違いないでしょうか?」
「は、はい。」
いきなり子供が流暢に話し出した事に驚いたのかお客様は目を丸くしていた。私だってしっかりしようと思えば出来るのだ。
注文もしっかりと終わり、ラテルが立っている方へと歩いた。何故かラテルも目を丸くして驚いていた。私の変わりように圧倒されたのだろうか。
「⋯ね、姉ちゃん、本物だよね?」
幾ら圧倒されたとはいえこの言われようは酷いと思う。
「逆に私の偽物なんてあるの?」
「この少し尖った言葉遣いは本物だ⋯じゃぁ何で?」
私が変わった事はそんなに変な事なのだろうか。確かに自分でも凄いとは思うけれどそこまで驚く事なのか。その事について言及すると
「うん、めっちゃ変。正直言って怖い。」
「えっ、怖いの?」
「うん。」という肯定の返事と深い頷きが返ってきた。聞いてみるとお客様からも凄い、という感情からの表情では無くドン引きという感情からの表情だった様に見えたらしい。
コミュ障を直したかったのに直したら直したで怖がられるならどうすれば良いのだ。
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