ある食堂の、侍女達の会話より。
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「⋯お嬢様の様子が変なのよね」
侍女のこの一言で、ついに物語が始まるのかと思った。
それはいつものように出勤し、長時間屋敷の掃除をした後、昼食、休憩時間のことだ。休憩の時、私たち使用人は住み込みの使用人が住む小さな離れの食堂で昼食を取る。その時に丁度侍女達の会話が聞こえる距離にいたのだ。
話の内容は最初はいたって普通の雑談だったのだが途中で話が変わり、今の話題になった。内容は冒頭の通り〝お嬢様の様子がおかしい〟ということだ。主人の話を軽々と話すのもどうかと思うのだが、まああんな性格の主人じゃあ仕方がない。
「本当におかしいのよ!鏡をみて青ざめたかと思えばいきなり騒ぎだしたり⋯」
先程の侍女がまた話しだした。内容的に私が読んだ原作通りで間違いないようだ。だがいきなり知らない顔になっていたら驚くのは当然だろう。
「それは私も思ったわ。普段お召し物をお出ししたらこれは嫌とすぐにおっしゃられるのに今日は何も言われなかったのよ?変な物でも食べたのかってぐらい変わったわよね。」
また別の侍女が言う。とはいえここまでの変わりようにこの程度の疑りしかないとは。主人公補正というものなのか。私が小さいときは大変だった子供とは無邪気なものだが私はこの性格だ。正直子供の演技をしていたとはいえ大人しすぎだったと思う。だが両親は気味悪がりもせずここまで育ててくれた。本当に感謝しかない。
「今までは毎日社交界やお茶会に出ていたのに最近は部屋にこもったり、屋敷内の散策ばかり。」
また違う侍女も言う。まあ元が現代人だ。社交界やお茶会には出ないだろう。
「今日はレオン様のところへ行っているそうよ。」
「嘘!?あのお二人全くと言っていいほど関わりなかったじゃない!?」
レオン様というのは悪役令嬢ペカタムの兄のことだ。彼も確か主要キャラ。元々はペカタムの所業に呆れて関わってなかったのだけれど彼女が変わっていく姿を見て関わっていくことになっていた。途中までしか見ていないため恋愛対象のキャラになっていたかは不明だ。
とはいえすでに会いに行っているということは記憶を取り戻して数日経っているらしい。今までの散々な所業があるというのに関わるというのは家族としての情か。はたまた主人公補正なのか。
まあ、彼女らと絶対に関わりたくないという私の意思は全く変わらない