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ある少女の、情けないけど。

 記憶が戻って数日たった今、私は机に向かって勉強をしていた。部屋には紙にペンを走らせる音だけが響いている。こんな風に勉強に集中するのは前世ぶりだ。正直今すぐペンを投げ出して逃げたい。


 しかしそれが出来ない原因が直ぐ隣にいる。察しが良い人ならもうわかっていることだろう。そう、ラテルである。ラテルには数日前から勉強を教えてもらっている。今日も今日とて勉強中である。


 最早ラテルが私の教師化しているのだ。ということでラテル先生、とたまに呼んでいる。しかしそのラテル先生は今、私の横で魔法を使い、シャボン玉らしき物を出して遊んで?いる。


 勉強が大嫌いで怠け者な私が珍しく真剣に勉強に取り組んでいるというのに隣で遊ばれると少しイラッとした為、勉強を中断してラテルに話しかけることにした。


「⋯あのー、ラテル先生?」


「ん?どうかした?あとその先生呼びやめて。」


 私の呼びかけに不思議そうに顔を向けたラテル。先生呼びは嫌らしい。それと私が少し下手に出た理由は、単純に申し訳なさがあるからだ。


 こちらは教えて貰っている身である上、この〝ある意味受験勉強〟は私の我儘のせいで発生している。そんなこんなで上から物言う事は出来ない。


「さっきから何してるのかな、って思って。その泡?みたいなの。」


「あぁ、これの事か。これは魔力調整の練習法だよ。」


「魔力調整?魔力を調整するって事?」


 初めて聞いた用語ではあるが流石に何となくでわかる。間違っていたら少し恥ずかしいが。


「そう。まあ言葉通り何だけどね。」


 そう言ったがラテルは先程から浮かんでいるシャボン玉のような物に指を向けて言葉を続けた。


「これは薄くした水の球体。水をこの形で維持しておく事は初心者には難しい事なんだ。だから魔法を極めようとする人間ならこの行動は絶対に一度は通る道だよ。」


「なるほど⋯でもラテルって魔法の才能が凄いんだよね?それなら初歩的な魔法の練習って必要なの?」


 そう伝えるとラテルは浮かんでいた水の球体を消してこちらに身体も向けて話し始めた。


「確かに僕には魔法の才能があるし一周目の時の知識も膨大に持ってる。⋯でも経験や努力で手に入れた力はリセットされているんだ。だから今、努力する事は大事な事なんだよ。」


 ラテルの考えでは才能があっても努力をするのは当然の事で大事な事らしい。私はその言葉に単純に尊敬した。私は昔から努力したり継続する事がどうも苦手だったからだ。


 今回だって勉強が面倒臭いと考えたり、辞めたい、と思っていた。でもラテルの言動は眩しくてかっこいいものだと感じたから頑張ろうと思えた。


 でもきっと私はこれからも面倒くさいとか、逃げたい、辞めたいと考えるのだろう。それでもこの子が私が怠けようとしたり、挫けそうになっても立ち上がらせて引っ張ってくれるような。


 それは、姉としては情けないけど、何だか安心出来るな、なんて思ってしまった。




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