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ある姉弟の、決意。

 ふと、いつから勉強を始めるのか、という事が気になったからラテルに聞いてみようと思い口を開きかけた瞬間、


「⋯ラテルー?声が聞こえたけどランペの目が覚めたの?」


 という声が部屋の外から聞こえてきた。この声はきっと母だろう。その声の直ぐ直後、扉の外から小走りで歩く足音が近づいてきた。そこで現れたのは予想通り母の姿だった。


「⋯目が覚めてたのね。良かったわー⋯心配してたのよ?」


 いきなり店の前に慌ててるラテルと倒れてる貴方が現れたんだもの、と言葉を続ける母。確かにその状況を考えると母が心配するのも頷ける。しかしそれ以上に少しシュールな状況に聞こえてしまう。


「うん、ごめん。ちょっと転んで頭ぶつけちゃったんだよね。」


「えぇ、状況はラテルに聞いていたから大丈夫よ。でも本当に気をつけなさいよ!今回は丁度近くにいた人が店の前まで運んでくれたらしいけど二人だけだったらもっと危なかったんだから。」


 母の言葉にどういうことだろうか、という疑問が浮かぶ。ラペルからは魔法でここまで運んだと伝えられたのに母は誰かが運んだ、と言っているのだ。


 その疑問からラテルの方に目を向けると申し訳なさそうに、話しを合わせてという表情が返ってきた。予想ではあるが母に魔法の事がバレないようにラテルが嘘をついたのだろう。


 一応ラテルの魔法の話しの方が嘘、という可能性もあるがラテルの反応的に違うだろう。いってしまえば勘、でもある。という事で話しを合わせておく事にしよう。


「わかった。これからは気をつけます」


「えぇ、それなら良いわ。それとラテル、その助けてくれた人をまた見かけたら家に連れてきてね!しっかりお礼しないと。」


 母のその言葉にラテルは屈託のない笑顔で「わかった!」と言った。この子の演技力には少々驚かされるものである。私にはこんなふうに子供のマネは出来ない。羞恥心が勝ってしまう。


「それじゃあランペは安静にしているのよ!私は父さんとお店の方にいるから何かあったら知らせに来るのよ!」


 そう言った後、母は部屋から颯爽と出ていった。今は店の営業時間だったはずだ。そんな忙しい中で私の様子を見に来てくれていたらしい。何となく申し訳ないような、嬉しいような、そんな変な気分になった。


 一周目の時から優しく育ててくれた両親には感謝しか無い。それなのに私は家族を置いて先に死んでしまったのだ。なんて薄情者なんだろう。なんて親不孝者なんだろう。 そんな事を考えていたらラテルがこちらを呼びかけてきた。


「⋯姉ちゃんが今何に悩んでたのかは何となくわかるけどさ、とにかく今は僕らの目標の為の作戦を考えるのが先だと思う。」


 ラテルは真剣な面持ちでこちらをしっかりと捉えている。ラテルのこの前向きさにはいつも驚かされるがそれと同じくらい勇気もくれるのだ。確かに後悔して立ち止まる時間なんて今の私には無い。


 それなら私に今出来る事をしよう。そう決意してラテルに力強く返事を返した。





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