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ある姉弟の、和解

 ラテルは少し俯いていて表情が良く見えない。_沈黙が辺り一帯を包んでいる。数秒後、ラテルは口を開いた。


「⋯何で、わざわざ茨の道を選ぶのさ。逃げた方が楽じゃん⋯!」


「⋯確かにそっちの選択の方が確実に実行できる。⋯でもね、私は死ぬ確率をゼロにしたいの。正直もう痛いのも死ぬのも嫌なの。」


 その言葉にラテルは顔をあげた。その顔は泣きそうで、それでいて怒りを含んだような顔をしていた。


「⋯だから僕が守るって言ってるじゃん!姉としての威厳とか、死ぬことへの恐怖とかっ!その気持ちだってわかるよ!⋯でも僕は姉ちゃんに生きてて欲しいんだよ!!もう、置いていかれたく無いんだよ⋯僕の気持ちも考えてよ⋯」


 ポロポロと大粒の涙を流しながら叫ぶように訴えるラテル。その姿を見て少し決意が揺らいだ。記憶を取り戻してから、否あの処刑の時から考えていた事。それは私が死んだ時にラテルがいた事だ。


 家族の死に様を幼かった弟が見ていたのだ。絶対にトラウマになっただろう。その事だけが気がかりで後悔していた。大事な弟に消えない心の痛みを残してしまったのだ。この事に関してはどれだけ謝っても謝りきれない。


 ⋯それでも、


「⋯それでも私は、知ってしまった未来を、悲劇を無視は出来ない。世界中の全員を救けたいとか、そんな聖人君子的な事では無いけど、自分やラテル、大事な人達がいなくなるのは嫌だから。これだけは曲げれないから。」


「⋯ラテルにはまた心配かけちゃうし、苦労かける事になるかもしれない。それは本当に謝っても謝りきれない。それでも、これは私の我儘なの。⋯本当にごめん。」


 また沈黙が広がる。この選択が正しいかはわからない。ラテルに嫌われるかもしれないし、呆れられるかもしれない。でも、私は皆で平和に暮らしたいんだ。逃亡生活なんて御免だ。


「⋯普段の姉ちゃんは基本達観的で自分から発言なんて基本しないはずなのになぁ。こういう時は絶対決めたことを曲げないよね。⋯うん、いいよ。今回は僕が譲ってあげる。」


 そう言い少し困ったように微笑んだラテルは言葉を続けた。


「でも本当に危なくなったら逃げるからね。⋯もう、何も出来ないのは嫌だからさ。」


「⋯うん。」

 



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