ある少女の、後悔。
同じ転生者であるお嬢様に印があって私には無いということは巫女という存在には転生以外の条件もあるのだろうか。そうじゃないと私に印がない理由が証明できない。⋯今そんなに悩んでもわからない事はわからないんだから考えるのは辞めよう。うん。
考えるのを辞めてふとラテルを見るとまた何か話そうと口を開きかけていた。
「話は戻るけど僕が魔術師になった理由は魔族が攻めてきた事が関係しているんだ。」
「⋯魔族が?」
「⋯うん。」
そういえば最初はラテルが宮廷魔術師になった理由の話をしていたんだっけ。話が脱線して忘れていた。
「国内で事件が発生していたとはいえ戦争とかが起こっていた訳でも無かったから元は平和だったこの国にいきなり魔族が襲いかかってきたんだ。そりゃ、国内は大混乱。平民達が暴動を起こしたり貴族が国外逃亡とかを起こして大変だったんだよ。」
「そんな中で国が出したとある政策を出したんだよ」
「政策?」
「そ、通称〝フォティス政策〟これは魔族を倒せる強い人間を集めて強制的に強化、及び戦いに出すものだよ。」
強制的に、つまり拒否権はないらしい。これではまるで、というか戦争の状態そのものだ。
「その政策にラテルも選ばれたってこと?」
「うん。僕は魔術部隊に選抜されたんだけどね。因みに魔術部隊に選ばれるのは水晶で計った魔力値が決められた一定値よりも高い者が選ばれるんだよ。」
「魔術部隊って事は他にも部隊があるってこと?」
「あるのは剣術に格闘、後は回復ってとこかな。まあ、他にも沢山あるけど前線に出るのはこの三つと魔術部隊ぐらいだし。」
戦う部隊以外にも武器を作ったり、魔道具を作ったりと沢山あるらしい。
「⋯って、魔術部隊も前線に出るって言った!?」
「え、うん。どうしたの、突然」
肩を掴みかかる勢いのまま言ったから驚いた様子だ。しかし今それに構っている事はできない。
「どうしたのって、それってラテルも前線に出たって事だよね?戦った、ってことでしょ!?」
「あ、当たり前じゃん。」
私がここまで取り乱した様子な意味が理解できていないらしい。ラテルは驚きが混じっているが訝しげにこちらを見ている。
「魔族って、人よりずっと強いんでしょ?そんなのとラテルが命懸けで戦ってたんでしょ!?そんなの!そんな、ときに、一緒にいてあげれなかった⋯お姉ちゃんだから守ってあげなきゃ駄目なのにっ⋯ごめん、ごめんねぇ⋯」
大事な弟が危険な、死ぬかもしれない事をしていた時に私はいなかった。悔恨、悲嘆、不甲斐無さ、色んな感情が入り混じる。気が緩むと涙が出そうだったからラテルを抱きしめた。万が一泣いたりしても見られないように。




