ある転生少女の、二周目。
最近、弟の様子がおかしい。やたらに働くのは辞めておけと訴えてくるし、いきなり酷く悲しそうな、怒ったような、辛い顔をする。しまいにはブツブツと独り言を喋っている。私は11歳だけど弟はまだ6歳だ。6歳といったら外で楽しく遊び回るような年齢では無いのだろうか。
そこで弟にも前世があるのかと思い「日本って知ってる?」と聞いてみたところ、「なにそれ?」ときょとん、とした顔と返事が返ってきた。とぼけている様な素振りではなかった為、嘘ではなさそうだ。
一月前の深夜、皆が寝静まった頃にベッドから飛び起きる音の後に勢いよく走る足音が響いた。弟の部屋から聞こえた音だった為、隣の部屋に寝ていた私は弟に何か起きたのではないかと飛び起きた。その直後、目を見開いて酷く焦った顔をした弟がドアのを開けて立っていた。数秒後に弟は口を開いた。
「⋯ね、姉ちゃん、本物、だよね?」
「⋯何言ってるの?」
そう答えた瞬間、泣きながら抱きついてきた。あんまり大きな声で泣くものだから母と父まで起きてきた。 結局悪い夢を見たんだろうという事になり、一緒に寝る事になった。その後も少し泣いていてその後も、「死なないで」とか「置いてかないで」と言い続けていた。⋯夢の中で一体私はどんな無惨な姿になったのだ。
⋯この夜から弟の様子はおかしくなったのだった。先程言った行動の他にも私が包丁や刃物を持つのを嫌がるし、怪我をして血を出すと凄く狼狽える。過保護と言うのか何というのか⋯
今日も弟の過保護は絶賛活躍中だ。朝からついて回ってきている。今は少し散歩に出ることにしたところに「僕も行く!」と弟もついてきたところだ。近所なのだから問題は無いというのに「気をつけてよ!」と注意深く言ってくる。
「姉ちゃん、転ばないように本当に気をつけてよ。」
「私そんなに転ぶような年齢じゃないんだけど⋯」
「油断してる時が一番危ないんだよ!いつ人が死ぬかなんてわかんないんだからさぁ!」
「えー⋯私そんなドジっ子じゃな⋯」
そう言いかけた時、足元にあった小石に気付かずに足を引っ掛けてころんだ。嘘だろ⋯という思考と弟の「姉ちゃーん!言ったそばからー!」という声と共に私の意識は沈んでいった。
その時、走馬灯のように浮かんできた前の記憶。前と言っても転生前の物では無い。お嬢様の皇太子毒殺により斬首刑された時の記憶だ。これはただの転生ではなく、ループもしていたらしい。意識が戻った時の私の一言はこれだ。
「⋯ラノベ展開すぎる。」




